ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

宣告の日のハチャトゥリアン 

 

フランチェスカッティのレコードの他に僕は欲しいレコードがあった。それはオイストラフの演奏するレコード。曲はなんでもよかった。オイストラフが演奏していれば。医大生の部屋で、オイストラフというヴァイオリニストのレコードを聴いて、とても興奮したのだ。

フランチェスカッティのクライスラー、そして僕はオイストラフのレコードを探した。一枚だけあった。それがハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲のレコードだったのだ。「剣の舞」という曲は知っていたけれど、ハチャトゥリアンのその他の曲は知らなかった。この曲が僕のヴァイオリン協奏曲初体験となった。

「もう一枚欲しいんだ・・・」

「いいよ、何枚でも買ってやるよ・・・」

このオイストラフのハチャトゥリアンを聴いても、やはりあの宣告の日を想い出す。

「ごめんね・・・kaz・・・ごめんね・・・」

母は泣く。僕は何故悲しむのか分からない。僕は以前の僕と変わらないから・・・何も変わらないから・・・

僕は人の半分以下しか音が聴こえなくても、今まで自分を不幸だと思ったことはない。不便だと思ったことは何度もある。ピアノを舞台で弾いていても、自分の音は聴こえないことが多い。自宅では電子ピアノでヘッドフォン使用で練習している。僕の聴力では、ピアノを弾く時は自分の音を聴きながら判断して演奏することが非常に困難なので、鍵盤の感触で「このような音が出ているだろう」と想像して弾いていることが多い。

正直、僕は電子ピアノだと上達しないとか、やはりグランドピアノでないと・・・という意見には反対だ。なんとかなるのだ・・・と思う。想像でもピアノは弾ける。聴こえなくてもピアノは弾ける・・・そう思う。なんとかなるのだ。

「なんとかなる・・・」

泣いている母を見て、僕はそう思った。

「ごめんね・・・」

「僕は大丈夫だよ・・・気にしてないよ・・・」

小学生だった僕は母に言った。

僕は自分が難聴でも不幸だと思わない、でもオイストラフやフランチェスカッティの演奏を知り、そして感動できるということは幸せなことだと思う。

この曲は、あの日のことを想い出させると共に、音楽と共に生きた喜びをも想い出させてくれる。

宣告の日のハチャトゥリアン・・・オイストラフ・・・

kaz



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