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ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

抑揚と歌 

 

ショパンのノクターンOp.9-2を弾くとする。ややもすると細かなパッセージばかり練習してしまう。それが練習と疑問にも思わず。最初のメロディーのシ♭ーソ・・・「ソの方が高い音、シ♭よりも強くして」ソの音がバシン。左手の最初のミの♭、これもバシンという音。音は弾けている。でも・・・

「まっ、一応弾けてから音楽のことは考えましょ」本来まずやるべきことは、片手でシ♭ーソを素敵に弾けるか・・・では?一応音だけ弾けてから何をするの?もしかしてそこは強制的自立を先生から促されていたりしない?自分のどこかで「どうすればいいのかな?」と常に悩みながら・・・

一応弾けるようになってからではなく、最初にやるべきことを、実は後回しにしていたりして。フィンガリングを決めるとか、音配置や指配置をまず馴染ませる、だから最初は表現とか抜きで弾いてみる。これも「まずは」ではなく、表現と同時に進めた方が効率的ではないかと思う。フィンガリングも、ただ「弾きやすい」ではなく、そこには表現というもののためのフィンガリング決めという面もあるのでは?

もしかして、バイエルの最初から、それは必要だったのかもしれない。ただ音を弾くということで、何かがスルーされてきてしまった・・・

音の長さや高さを、ただ読んで鍵盤に移す・・・ではなく、イタリア語の抑揚は印刷された文字群には記されていないように、楽譜もその部分は記されていなかったとしたら?イタリア語をロボットのように発音して「なんだかな・・・」と感じるのと同じようなことを、ピアノでもやっているのかもしれない。

歌を聴いてみたらいいような気がする。ピアノの人って何故かピアノばかり聴く傾向はあるかもしれない。別にオペラやクラシックの歌曲に限定しなくてもいいように思う。目的は一般教養を身につけるためではなく、歌と言葉の流れから抑揚を感じるためなのだから。

歌にはピアノにはない歌詞、言葉が存在する。話し言葉の抑揚と似ているというか?さらに感情というものが、言葉と共に、音の高低、長短に凝縮されている。本当はピアノもそうなのだと思うけれど。

イタリア語の抑揚、そんなことを考えていて、ルーチョ・ダッラの「カルーソー」を思い浮かべた。ルーチョ・ダッラはクラシックのベルカント唱法で歌っているわけではない。ポップス系、ナポレターナのカンタウトーレ系の人だ。ベルカント的美声というのとは異なる声で歌っている。また「カルーソー」という歌、サビの部分は、いかにもイタリア~ンな感じだが、結構同じ音が連続した語りのような部分が多い。そこの部分が、この人はとても上手いような気がする。そのような意味で「印刷されていない抑揚」というものを感じやすいのだと思う。

感情を乗せる、音楽的に演奏する、この部分が後回し、もしくは「私には無理」とスルーされがち。ルーチョ・ダッラはカンタウトーレなので、この「カルーソー」も自作自演ということになる。往年の歌劇王カルーソーを歌っている。

自作自演なので、想いというものが直に伝わってくるのかもしれない。実際、この「カルーソー」にはエピソードもある。ルーチョ・ダッラがソレントに滞在していた時、自分の船(!)が故障してソレントにしばらく滞在しなければならなくなった。彼が滞在したホテルの部屋、実は、かつてカルーソーが死の直前、療養中に滞在していた部屋だったのだ。カルーソーは死の直前まで若者たちに歌のレッスンをその部屋でしていたらしい。その部屋からは海が見える。カルーソーが見た光景をルーチョ・ダッラも見た。そして「カルーソー」という名曲が生まれた。カルーソーはナポリの貧民窟で生まれた。アメリカで大成功を収め、その地で歌劇王と呼ばれた。咽頭の手術をし、血を吐きながら療養のため祖国に戻ってきた。

「この海は、今見えている月はカルーソーもかつて見たものなのだ・・・」


「カルーソー」  曲:詞  ルーチョ・ダッラ

ソレント湾に面したテラス 彼は海の上の灯りを見た
彼はさめざめと泣いた後 咳払いで声をととのえ歌を歌い始めた

アメリカでの公演の日々について考えながら
ただ漁師の灯りと船の白い波があるだけだった

彼はピアノから湧き出てくる音楽に苦痛を感じた
でも雲から現れた月を見た時、彼には死も心地よく思えた

彼はスクリューの波跡のような過ぎた人生を想う
それは紛れもなく終わりのある人生
でも彼はもうあまり考えなかった
そう、何やら幸せな気分になって
好きな歌をまた歌い始めた

「お前が好きだ とても好き とてもとても・・・分かるだろう?
 お前はその熱い血で こうして鎖を解き放ってくれる。分かるだろう?」





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