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ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

もちろん不満はない・・・ 

 

科学とかスポーツ、基本的には過去よりも現在の方が進歩しているというのが前提としてあると思う。フィギュアスケート、1980年の世界選手権で渡部絵美がフリーで3Tと3Sを成功させた。当時としては快挙だったけれど、今だったら二種類、二回のトリプルジャンプではお話にもならないだろう。そう、進歩しているのだ。

演奏はどうだろう?誰でも難曲を弾く・・・のような底上げ的な意味では進歩しているのかもしれない。「イスラメイ」のような曲も、そのへんの(?)音大生でさえ弾きこなす・・・のような?昔だったら弾く人は限られていたと思う。そう、進歩しているのよ・・・

ピアノの演奏会には滅多に出かけないけれど、声楽の演奏会はよく聴きに行く。数年前、マーク・パドモアという人の「冬の旅」を聴いた。大変に素晴らしい卓越した歌唱だったことは僕にでも分かった。「欠点とか、ないんじゃない?」

帰り道、僕はたった今聴いたマーク・パドモアの歌唱ではなく、昔聴いたヘルマン・プライの「冬の旅」を回想したながら歩いていた。どちらも素晴らしい歌唱だったことは間違いない。僕の中に懐古趣味のようなものがあって、その部分がパドモアではなくプライを求めたのか?そうかもしれない。

むろん、パドモアのシューベルトは素晴らしかった。でもプライの歌唱から感じたような、自分との関わり・・・のようなものがなかった。プライの歌唱を聴いた時には、自分が生きていること、孤独な旅人の虚無感、そのような想いが混ざり合い自分の中で混沌としていた記憶がある。プライのシューベルトは僕の中に鋭く切り込んできた。パドモアの歌唱とは、ある意味距離があったような気がする。「素晴らしい」とか「最高に上手」とかは思う。でも自分の中には入ってこない。素晴らしい歌手がいるということに喜びは感じるけれど、パドモアは切り込んではこなかった。素晴らしい歌唱として傍らにあった・・・というか・・・

昔の演奏って、現代の基準とは異なる。声楽の場合だと、やたらポルタメントが多かったり、ピアノでもアゴーギクが大きかったりする。先生から「そんなふうに弾いてはいけませ~ん」のような演奏ではある。例えば、ショパンのバラードの1番で、最初のCの音、ここを左手と右手でずらして弾くなんて、今だと御法度だろう。最初のCのユニゾンは当然同時に弾く。でもモイセイヴィチはずらしている。ドド~みたいに。でもモイセイヴィチの演奏は僕の中に切り込んでくる。ツィメルマンの演奏は切り込んでこない。「最高に上手いじゃない?」とかは感じるんだけど。

僕自身の懐古趣味?それはあるだろうが、それだけでもないような気がする。何だろう?言葉では説明できないような何かがたしかに存在しているように思う。

クラシック音楽の低迷、衰退、さかんに叫ばれている。「クラシックなんてダサい」とさえ言う人もいる。「昔と比べて今は娯楽が多いから」そうだろうか?演奏そのものが変わってしまったということと全く無関係ではないような気はする。

演奏を聴いて、ただ「上手ね」とか感じたいのではない。自分の心が動いて欲しいと願う。一緒に泣きたいとさえ思う。切り込んできて欲しい、そう思う。ただそのような演奏、今では非常に少ないように感じる。理屈ではないのだ。演奏を聴いて一緒に泣いたり、鼓動を速くしたりしたいだけなのだ。

マーク・パドモアの「アデライーデ」・・・ベートーヴェンにも(?)こんなに素敵な曲があったのね。パドモアの歌唱は素晴らしいと心から思う。このような歌唱に対して不満は全くない。ただ一緒に泣けないんだ・・・

kaz




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コメント

 

kazさん、今回の記事もうんうんと頷きながら読ませていただきました!
感情に切り込んでくる演奏と、すごく上手いのにピンと来ない演奏って・・・あります。
それって何だろう?
一体何が違うんだろう…
最近バラード1番の演奏をyoutubeで片っ端から聞いていて、今その事を考えています。

ね~み♪ #- | URL | 2018/01/29 14:42 | edit

ね~みさま

共に泣き、共に躍動できる・・・ということ。演奏に求める基本のような気もしますし、とても困難なような気もします。

バラードの1番ですが、思い切って現代のスターピアニストたちではなく、往年系のピアニストを聴いてみたらいかがでしょうか?

もしかしたら「私の内面、そのものだわ」みたいな演奏があるかもしれません。

kaz #- | URL | 2018/01/29 15:22 | edit

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