ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

ジノのシャコンヌ 

 

僕の人生の中で幸運だなと感じることがある。音楽の道というのかな、それは職業的なということではなく、音楽を聴く、自分で演奏するという意味においての根本的な部分においての、導き役のような人が複数いたことだ。

仮にAさんとしておく。アメリカで知り合った人だ。彼はヴァイオリンを弾いていた。Aさんは、僕と会う度に言った。音楽、僕の場合はピアノということになるが、鑑賞するだけではなく、もう少し生活の中に溶け込んだピアノライフに、なぜ消極的なのかと。本当に聴くだけでいいのかい・・・と。

聴くだけでは寂しかったのだと思う。でも日本に帰国後も、なかなかピアノライフを満喫するという気にはなれなかった。寂しかったけれど、ピアノ道というのかな、レッスンを受けることに関してもかな、どこか怖かったのだ。「本当にそれでいいのかい?」Aさんの言葉を痛く感じることもあった。クリスマスカードに書いてくるんだよね。「弾き始めたかい?」と。痛かったな・・・

ヴァイオリンの音色に魅せられてしまったのだそうだ。音を出すのは難しく、同時にエクスタシーでもあったと。アメリカの西海岸で育ったAさんにとってヴァイオリンは、あくまでも趣味であった。心の内を音に託す、それがAさんのヴァイオリンでもあった。

父親と同じく、医学部に進み、将来は医師になるのだ、そう思っていた。そんな時、ヴィターリの「シャコンヌ」を聴いた。ジノ・フランチェスカッティの演奏だ。その「シャコンヌ」がAさんの人生を変えたのだ。

「ああ、こんな世界を追及していけたらどんなに幸せだろう?到達できなくても、憧れたという事実だけでもいい、深く入っていけたら・・・」

「僕、ヴァイオリンを弾いてみたいんだ」「もう弾いているだろ?」「そうじゃなく、もっと・・・何と言うか・・・」「ヴァイオリニストになりたいのか?医者ではないのか?」「僕、やってみたいんだ」

父親は、しばらく目を閉じ、こう言ったのだそうだ。「やりたいことを全うするのが人生だろう?」

その瞬間から、Aさんにとってヴァイオリンは修業というべきものとなっていった。

kaz




にほんブログ村


ピアノランキング
スポンサーサイト

category: 未分類

tb: --   cm: 0

△top

コメント

 

△top

コメントの投稿

 

Secret

△top