ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

ピアノの老後対策 3 

 

何か話す度に周囲が驚き、離れていくような気がする。私は私なのに。変わらないのに。

息子と名乗る人も現れた。私に息子なんていたかな?すると、あの女性は私の妻なのか?訊いてみたい。本当なのかと。でも彼らの寂しそうな顔を見るのは辛い。いい人たちのようだ。でも私が話すと彼らは哀しくなるようだ。黙っていようか?もう何も語らずに・・・何もせずに・・・

ある時、ふと気づいた。歌を歌うと彼らが安心することに。私は歌手だった。それは覚えている。音楽が鳴ると歌いたくなる。ならば歌おう、そう思った。私も幸せだし、彼らも幸せだったら歌おう。

私はアルツハイマーという闇の中にいるのだそうだ。彼らの哀しみと関係があるのだろう。世界には私と同じような人が沢山いて、私のように闇の中にいるのだそうだ。

「そのような人たちを元気づけてあげよう・・・」息子と名乗る彼からそう言われた。

「私に何ができる?」「歌えばいいんだ。父さんの歌が同じような境遇にいる沢山の人に、その家族に勇気を与えるんだ」「歌えばいいのか?」「そう、いつものようにね」

ロンドンにある、なんとかという有名で由緒あるスタジオでレコーディングをするらしい。昔は場所の名前なんて忘れたことはなかったのに。やはり私はアルツハイマーということなのだろう。

「これは何だ?」「マイクだよ。これが音を拾うんだ」「ここに歌えばいいんだな?」「そう、いつものように・・・」

「歌は好きだ。昔から好きだった。だから歌っているんだ。それだけでいいんだな?」「そう、それだけでいい・・・」

CDというものになるのだそうだ。私は見たこともないが。売り上げはアルツハイマーというものの研究資金になるのだそうだ。まあ、それもいいだろう。

彼らには迷惑をかけてきたようだ。でも彼らは笑っている。私も笑いだしたい気分だ。

歌い続ける、それでいいのだと思う。

kaz




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