ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

初恋 

 

雁部一浩著「ピアノの知識と演奏」という本に、次のような文があった。

「演奏という行為は私たちが作品にアプローチして作曲家の思いを代弁するという図式に捉えがちですが、真相はその逆で、むしろベートーヴェンやショパンの方が私たちの切なる思いを代弁してくれているのではないでしょうか」

「私たちの内面に在るものを彼らが見事に書いてくれているからこそ、作品への共感が生じるのだとすれば、つまるところ演奏とは、他者の作品を借りて自らの思いを表現する行為ということになります」

自分の内にある何ものか、それを作品が代弁してくれている、なので心が動く・・・ということなのだろうか?

孝蔵少年は面と向かって「好き」などとは到底言えなかった。せいぜい慕う相手のいるテニスコートにサッカーボールを蹴り上げることぐらいしかできない。自分の名前なんてとても言えない。

でもこの苦しいような、切ないような思いは何なんだろう?「愛」という字を書いてみる。心が震えてくるようだ。僕は愛を感じているのか?だからここまで苦しいのだろうか?

「ピアノの知識と演奏」にはこうも書いてある。

「音楽を聴くということは、音楽をただ音構造として認識することではなく、多様な音表情が自らの感情の襞に触れ、これを触発し、そこに共感が生まれるということでなくては意味がありません」

転校してしまうのか・・・

お別れさえ言えない。話す勇気さえも今までなかったのだから。駅に見送りに行こうか?でも同じクラスでもない僕が駅にいたら
皆も変に思うだろう。

電車は発車した。「もう会えないんだ・・・」

孝蔵少年は自転車を必死に漕いだ。自転車は電車を追い越し、孝蔵少年は踏切で、走り去っていく電車に向かって大きく手を振った。できたのはそれだけだった。意思表示はそれだけだった。それが孝蔵少年の初恋だった・・・

kaz




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