ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

亡くなるときまで I love you・・・ 

 

音楽と臨終の時、人生の終末期というものとの関連性は研究されていて、ミュージック・サナトロジーという言葉もあるぐらいだ。最近では日本でもリヴィング・ウィルなどという概念が医療現場では考えられてきているようにも思う。緩和ケアなども、そんなに異端なことでもなくなってきたように思う。音楽という、感情を動かすものと命との関連性はこれからさらに深まっていくようにも思う。

もともとは米国から広まってきた概念ではある。この分野で有名な人と言えば、テレーズ・シュローダー・シェーカーという人だろう。この人は臨終の場でハープを弾きながら愛に包まれる場を実践している。1970年代、この人は学費を稼ぐために高齢者施設で介護の仕事をしていた。ある人が苦しんだんだね。直感的にその人の頭を少しだけ持ち上げ、耳元でグレゴリア聖歌を歌ったのだそうだ。そうすると、その人は苦痛表情を和らげ、落ち着いた安堵した表情になったそうだ。音楽と苦痛緩和が学問として結びついた瞬間でもあった。

さらに昔から、臨終の時と音楽というか、サウンドというものは人類の知恵レベルで文化を問わず取り入れられているようにも思う。耳元で祈るとか、お経とか。聴覚というものは最後まで尊厳を守るものなのだろうか?そう考えると「もう意識なんてないんだから」と、枕元でその人の死後の始末、遺産とか葬儀のことを近親者で話し合うなんて、いけないことなんだなと思う。聴こえているかもしれないのだから。理解しているかもしれないのだから。

介護の現場で長い間働いてきて、似たような経験をしたことがある。もう随分昔のことになるが、ある特養の重度のフロアの担当だった頃だ。たしか30床のフロアで、ほぼ全員がオムツを着用していたと記憶している。オムツ交換をするわけだが、経管栄養の人がほぼだったせいか、便が水様の人が多かった。オムツ内に留まっていればともかく、リネンや時には床まで漏れていたりすることもあった。「う~ん、これが3K職場の現実か~」などと思っていた。大変なんだもん。

尊敬できる先輩スタッフがいた。その人は困苦のオムツ交換時、一人一人に話しかけながら介助をしていたのだ。「今日は少し暖かかったわね」とか「紅葉が綺麗な季節になったのよ」とか。「なんでそんなことを言いながら交換しているのですか?」先輩はこう言ったのだ。「だって・・・相手は人間ですもの・・・」と。

早速僕も真似るようにした。声掛けと共にオムツ交換をしたのだ。ある方の臨終の時、肩で呼吸をし、死亡診断書を書くために医師、看護師が呼ばれ、家族も詰めかけた時、意識がないとされていたその人が手を動かそうとしたのだ。泣きながら・・・

「お母さん、私よ、分かる?」家族が話しかける。でも目は家族を見てはいなかった。手を家族ではない方に向けようとしていた。医師でも看護師でもなかった。

「ねぇ、あなたに・・・じゃない?」手は介護スタッフである僕に向けられていたのだ。何を言ったらいいのか分からなかった。ただ「辛いんですか?」と。涙を浮かべながら、その人は僕の手をそっと、そして力強く握りしめた。そして永遠の眠りに旅立ったのだ。

この経験は3K職業と言われている介護という仕事にのめり込む一因ともなった。また、サウンドとして耳元で囁いていたということが関連しているという自覚にもなった。

愛・・・というものだと思う。その人を愛していたとか、そのような感情があったかどうか、当時の僕にそのような意識はなかったと思う。でも愛と相手は感じたのかもしれない。

音楽を聴いて心が揺さぶられる、この時の感情、それは言葉で表現できないようなものだからこそ、だからこそ重いし、臨終の時ではなくても、何かを感じてしまう瞬間なのではないか?そしてその瞬間の積み重ねは人生の週末へとつながっている・・・

生まれた時から、そして死ぬときまで「I love you・・・」なのだ。愛に包まれるために人は人生を歩むのだ。音楽は時に、そのことを自覚させてくれる。代弁してくれる。

kaz




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コメント

 

だから。。。

kazさんこんばんは。今日の記事、心熱くなりました。私もピアノを弾くものとして、やはり、言葉にできないことを、音楽は語ってくれています。

ピアノって、ピアノが楽器だと思われているけど、本来は自分が声楽のように楽器で、ピアノという楽器と一体になって表現していると思っています。

kazさんのピアノ。一度聴いてみたいなー、と、いつも思います。このブログで語っている、感受性の塊の表現、ピアノと同じように訴えるものが、心揺さぶられるものがあるんだと確信しています。 そんな方のピアノ弾きさんが増えればな〜と思っています。

あと、お仕事とピアノを分けて考えていなくて、自然にご飯食べるのと同じように、ピアノが特別視されずに、人生共にある!というのも素敵です!!

思わず感動しましたので、コメントしました。毎日の記事楽しみにしています!

うたちゃん #- | URL | 2017/04/28 23:34 | edit

うたちゃんさま

コメントありがとうございます。そうですね、あまりピアノ(余暇?趣味?)と仕事とは分けていないかもしれません。目的のようなもの?生きていく・・みたいな目的と重なるというか?

kaz #- | URL | 2017/04/29 20:33 | edit

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