ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

自分への挑戦 

 

浅田真央選手のファンというわけではなかった。ユナ・キム選手の演技に惹かれていた。でも当時は(今も?)彼女の演技が好きとは言えないような殺伐とした雰囲気もあったように思う。スケート観戦から離れてしまった理由の一つでもある。

先の会見で「スケートへの恩返し」みたいなことを浅田選手は言っていたように思う。この言葉で何か僕自身は救われた気持ちがした。自分は輝くことができた、スケートをしていたから・・・このように感じられたから。

トリプルアクセル、おそらくこのジャンプに拘っていたのだろうし、周囲もこのジャンプのことばかりを話題にしていたように思うが、個人的には浅田選手の競技会での演技ではルッツとサルコウに注目していた。バンクーバーオリンピック後、佐藤信夫コーチと出会ってから、基礎の修正を行ったような印象を持つ。ルッツのエッジの修正とか。ノービスからジュニアへ・・・みたいな選手だったら「基礎を直しましょうね」も受け入れやすいだろうが、浅田選手には過去の実績があった。それでも挑戦した姿が素晴らしかったように思う。「自分への挑戦」というように観ている方には感じられたものだ。過去最低の成績などと言われた最後の全日本選手権でも、ルッツとサルコウは回避しなかった。清々しさを感じたのは僕だけであろうか?

自分への挑戦という意味で、一人の選手を思い出す。アメリカのエレイン・ザヤック選手。この人は例の「ザヤック・ルール」で有名になってしまった感もあるが、どこか浅田選手と重なるところがある。演技のタイプというのだろうか、そこは全く異なる。ザヤック選手は「元祖ジャンプ娘」みたいなところがあり、浅田選手というよりは、伊藤みどり選手を連想させる。

でも少女が難しい技を簡単にこなしていくという衝撃感、観客席を啞然とさせる様子などは、かつての浅田選手とも似ているかもしれない。1981年の世界選手権で2位になっている。「えっ、トリプルいくつ跳んだ?」みたいな驚きがあった。翌年の世界選手権で初優勝。この時は苦手なコンパルソリーでは、まあまあの位置につけたが、なんとショートプログラムで大失敗。7位でフリーに挑んだ。でも優勝してしまった。当時の採点システムでのフリー6人抜きは凄いことのように思う。84年のオリンピックでは、コンパルソリーで出遅れ15位発進。でもショート、フリーで挽回し、総合6位まで躍進した。このあたりはソチでの浅田選手を彷彿とさせる。

オリンピック後の世界選手権で銅メダルを獲得し現役引退。1984年のことだ。その10年後、つまり1994年に一度だけ現役に復帰している。その年のオリンピックは、プロスケーターにも一度だけの復帰のチャンスが与えられた大会だったのだ。10年間、アマチュアの競技会というものから遠ざかっていたザヤック選手は、30歳近い年齢になっていたはずだ。

残念ながら、全米では4位に終わり、オリンピックには出場できなかったわけだが、ここでの彼女は「自分への挑戦」というものを試みたのではないかとも個人的には感じる。10年前とはジャンプ難易度のレベルが全く異なる。しかも、ミシェル・クワンなどという若手も台頭してきていた。

ザヤック選手は94年の全米ショートで、トリプルループをプログラムに組み入れている。このジャンプはトゥループを得意としていたザヤック選手には鬼門・・・のようなジャンプではなかっただろうか?81年、世界選手権で2位になった時もループはクリーンではなかったし、翌年優勝した時もループはダブルに回避している。

10年後、絶対に失敗できないショートプログラムで鬼門であるループに挑戦した。現役時代にはショートにループジャンプを入れたことはなかったはずだ。若かった現役時代にさえ、一度も挑戦しなかった技を、30歳近くなって、しかも10年の競技会ブランクがあったにも関わらず、彼女はループをコンビネーションで跳んだ・・・

過去の自分への挑戦ということでもあったのかもしれない。またかつて、自分を輝かせてくれたスケートというものへの恩返しという気持ちもあったのかもしれない。「スケートがあったから、自分は輝くことができた」

ザヤック選手は幼少の頃、芝刈り機の事故で左足の指を切断している。スケート靴には詰め物を入れて演技していた。そもそも、スケートは療法目的で始めたのだ。

「浅田真央は引退すべき!」と言っていた人もいるようだ。そのような人に、このザヤック選手のショートプログラムを観て頂きたいようにも思う。何も感じないのかもしれないが・・・

kaz




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category: The Skaters

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