ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

逃避行 

 

「さあ、今のうちに・・・早く・・・」「どうして私を助けてくれるのですか?あなたはドイツ人なのに」「マリラ・ジョナスさんですね?かつてワルシャワで、あなたの演奏を聴きました。あなたのような方が強制収容所にいるなんて。世の中狂っている。私にできることは、あなたを逃がすことだけです」「逃げられるのは私だけなのですか?家族はどうなるのです?」「ご家族のことはどうしようもありません。どうか私のことは内密に願います。さあ、夜の闇に紛れて逃げるのです・・・」

彼はナチスドイツの高官だった。ナチスにも人間はいたのだ。

「マリラさん・・・どうか、どうか、あなた一人でも生き延びて下さい。ご無事で・・・」

彼はベルリンのブラジル大使館を頼るように言っていた。でも辿り着くだろうか?ここクラクフからドイツのベルリンまで600キロはあるのだ。食べる物はどうしたらいいのだろう?

寒さと餓えに耐えながら、彼女はベルリンまで歩いた。

「おい、人が倒れている。生き倒れになっている」ブラジル大使館の職員がボロボロになった女性らしき人間を保護した。

「あなたは誰なのです?どうしてここにいるのです?話せますか?話をすることができますか?」

彼女は、これまでの経緯をなんとか話した。「よくもここまで無事で。奇跡ですよ、生きているなんて・・・」

大使館側は彼女のことをこう記録した。

「マリラ・ジョナス、女性、国籍ポーランド、人種ユダヤ人、ピアニスト。トゥルチンスキ教授にピアノを師事。ナチスドイツに対して演奏による協力を拒否し、クラクフの強制収容所に収容される。家族については安否不明」

難民としてブラジルに避難させよう、このままベルリンに滞在していては彼女の命は保証できない・・・

新天地、ブラジル、そこではユダヤ人迫害はないのだろうか?両親、兄弟、親戚はどうなったのだろう?

生きているだけでやっとだった。彼女は船でブラジルに渡った・・・

つづく




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