ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

リサイタルの流行 

 

もう大昔、僕が高校生か大学生か、その頃、あるピアノリサイタルを聴いた。昔のことなので、記憶も曖昧なところが多いのだが、草野政眞という男性ピアニストのリサイタルだったように思う。。曲目に惹かれたのだと思う。大曲バ~ンという通常のリサイタルとは異なり、19世紀のサロンコンサートといった趣きだったのだ。往年のピアニストのトランスクリプションやパラフレーズがてんこ盛りで、その種の音楽はレコードでしか聴いたことがなかったので、興味を抱いたのだ。

演奏は素晴らしかったと思う。非常に素晴らしかった。会場は、たしか上野の東京文化会館小ホールだったように記憶している。でも定かではない。

当時は「音楽の友」のような雑誌も時折読んでいたので、そのリサイタルの批評が目に入ってきた。その内容も記憶が曖昧なところもあるが、たしか演奏そのものだけではなく、プログラミングについても触れていたように思う。

「小曲、サロン風小品を並べすぎで、リサイタルとしてまとまりに欠けていた」とか、そんな感じだっただろうか?この批評、つまりリサイタルというものは、大曲を並べることだ・・・という意味だったのだろうか?ワンコーナーとしてならいいけれど、全体を19世紀サロンというのはちょっと・・・みたいな?

たしかに僕も、もっとこじんまりした会場で聴きたかった・・・とは感じたように思う。サロンというかホームコンサートというか。でも当時は小規模のサロンなんて、東京にもそうは存在していなかったのではないだろうか?発表会は公民館、市民ホール・・・と決まっていたような時代だ。器、つまりハードが充実してきたのは、もうちょっと後になってからのような気がする。

数十人規模のサロンコンサート、今はその種のコンサートに適した会場、特に東京などでは充実しているように思うが、ハードは充実していても、なんとなくソフトが追いついていない感じもしたりする。演奏者も聴衆も、どこか「リサイタルとは大曲バ~ン」というものだと思っているのか、それとも演奏側は「勉強の成果を披露したい」と思いすぎ、聴き手との交流という側面まで考えられないのか、両方なのか、素敵なサロン小品というものが、教材としてもレパートリーとしても定着していないように感じる。

30人のコンサートで、大曲が並び、聴き手もどこか固まったまま、咳もできずに、「シッ・・・」みたいな感じでは、ちょっと窮屈な感じもする。

サロン小品を素敵に演奏できる感性、つまり「きゃっ、素敵!」という要素を演奏者が醸し出せなくなったということもないだろうか?パデレフスキの「メヌエット」のような作品を聴かせることのできる人が少なくなった、あるいは聴き手も、その種の小品を素晴らしく演奏された時の、ある種の恍惚感のようなものに鈍感になった・・・

「わっ、立派!」とか「よく研究したのね!」という感覚はリサイタルで満たせても、もっとシンプルに「なんて素敵なのかしら・・・」という感覚は久しく味わっていない・・・みたいな?

サロン風の曲、往年のピアニストの編曲作品、この種の曲って、もともとザハリヒな方向性とは合わないのかもしれない。楽譜に忠実、例えばベッリーニのアリアを印刷された通りに歌う、そういうことではないように思うのだが。そんなベッリーニは滑稽でしかないのでは?長い歴史が培ってきた演奏者サイドの伝統、例えば楽譜には印刷されていないヴァリアントをどうするか・・・みたいな?その伝統、習慣のようなものを無視して印刷してあることを正確に・・・ということが楽譜に忠実ということでもないように思うのだが・・・

リサイタルの会場が大きくなるにつれ、演奏スタイルというものがザハリヒなものになるにつれ、サロン風、サロンに適したピアノ曲というものが忘れ去られていったということはないだろうか?例えば、教材としては超有名だが、メンデルスゾーンの無言歌集などをリサイタルで素敵に弾ける人が限られていったとか、ウェーバーの「舞踏への勧誘」のような作品を、ただ立派(?)に正確に演奏されてもなぁ・・・のような???

草野氏、僕が生で聴いた頃は盛んに演奏していたようだ。でも今は演奏していないようだ。氏のホームページで確認しても次回のリサイタルの予定などは記載されていない。また是非聴いてみたいと思うのだが・・・

今、素敵なサロン風小品、往年のピアニストのトランスクリプションなどを、こじんまりした会場で聴いたみたいという人は相当数存在しているように思うが。大曲バ~ン形式に飽きてしまった人も多いように思うがどうなのだろう・・・

そう、演奏を聴いて「なんて素敵なの!」そう感じたいだけなのだ。最も高尚とされているクラシックのリサイタルでそれが難しいというのは、かなり寂しいように思う。

そろそろ草野氏のような演奏家の時代到来だと思いたいのだが・・・

kaz




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