ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

シャローム 

 

ニューヨーク時代のルームメイト、Hはポーランド人だった。彼からは強烈にポーランド人ということを感じることが多かったように思う。シェアした部屋には古い古いアップライトピアノがあった。彼がニューヨークで購入したものらしい。中古で買ったボールドウィンだったと記憶しているが、記憶も定かではない。Hはピアノを習ったことはない。そう言っていた。でもアルコールが入ると、気ままにピアノで遊んだ。そして歌った。その歌は時折音程が外れ、ピアノも違う音を弾いたりしていたが、習ったこともないのに、ピアノを弾くということが面白かった。単旋律の楽譜に適当に伴奏をつける、彼だけではなくヨーロッパ人やアメリカ人には、これができる人が多かったように思う。不思議なことだね。何年ピアノを習っていても日本ではピアノ遊びのできない人も多いから・・・

ポーランド民謡、彼にとっての故郷の歌や、何故か黒人霊歌を弾いたり歌ったりした。黒人霊歌はサミュエル・コルリッジ=テイラー編曲のものを弾いていたように思う。何故黒人霊歌なのか?長い間彼がポーランド移民であるからだと僕は思っていた。政治的理由から祖国を離れ、家族とも離れた自分の境遇、ポーランド人としての想いなどを歌やピアノに託しているのだと。自分だけが自由の国に逃れたという想い・・・

「深い河」 

深い河、俺の故郷はヨルダン河の向こう側
深い河、神よ!俺は河の向こうの集会所に行きたいんだ
ああ、行ってみたいと思うだろ?福音に満ちた礼拝に
ああ安らぎに満ちた希望の地に!
ああ、深い河、神様、俺はこの河を超えていきたい

彼にとってのヨルダン河はポーランドとニューヨークに横たわる河だと僕は思っていた。「僕たちはどこに行っても行き場がないんだ」という彼の言葉、それは祖国を逃れたポーランド人の言葉だと思っていた。

滅多になかったが、たまにHと共に彼の友人たちと会うこともあった。ポーランド系の移民たちが集う酒場のような所で一緒に食べたり飲んだりした。まさにポーランドを偲ぶような店だった。バンドが入っていてポーランドの曲を演奏していた。ポーランド料理が提供された。彼らは僕が混じっていることに違和感を感じなかったようだ。日本人である僕を歓迎してくれた。でも英語で彼らは会話していたので、僕に気を使ってくれていたのかなとも思う。いつもはポーランド語で話していたのではないかな?

バンドが、どこかで聴いたことのある曲を演奏し始めた。「マイムマイム」だった。「あっ、これ知ってる!」「何故日本人であるあなたがこの曲を知ってるの?」「日本では有名だと思う。小学校で習うんだ。日本人は誰でもこれは踊れると思う」「日本の学校で?誰でも踊れる?」僕はマイムマイムとは、パントマイムからきているのだと思っていたが、マイムとはヘブライ語で「水」を意味するのだとも、その時に知った。イスラエルの砂漠で水(井戸)を発見し神に感謝する・・・という意味の歌詞、踊りなのだそうだ。たしかに中央の井戸を囲んで皆で踊るという振り付けではある。

「一緒に踊ろう!」「僕たちと同じ踊りじゃないか?」

似たようなことがあった。Hがピアノで弾き語りをしていた時、「マイムマイム」と同じく、聴いたことのある曲を彼が歌いだした。「あっ、それ知ってる」「何故日本人である君がこの歌を知っているんだ?」

日本では、かつて歌声喫茶などで歌い継がれてきた歌なのではないだろうか?僕はダーク・ダックスの歌唱で知っていた。

シャローム チャペリン シャローム チャペリン・・・

「何故君がシャローム・へべリムを知っているんだ?日本ではへべリムをチャペリンと言うんだね・・・」

シャロームとはヘブライ語で「こんにちは」とか「さようなら」を意味する。別れる時のシャロームは、さようならになる。へべリムとは友達。「さようなら、友よ」という意味になるだろうか?

Hのピアノに合わせ、二人で歌った。彼はヘブライ語で。そして僕はダーク・ダックス版の日本語で。

「僕たちはどこに行っても行き場がないんだ」これは、もしかしたらユダヤ人としてのHの心境だったのでは、今はそのようにも感じている。

「シャロームの歌」(ダーク・ダックス版)  詞:伊田 誠一

シャローム チャペリン シャローム チャペリン
どこかで またいつか会えるさ
また会おう また会おう どこかで
きれいな想い出抱きしめ
また会おう また会おう どこかで

みどりの星ふたつ 寄り添う
離れても 離れても 寄り添う

どこかで またいつか会えるさ
泣かないで 泣かないで さようなら

kaz




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