ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

調性浮遊 

 

最近、加齢と共に絶対音感がなくなってきているように感じる。聴力と異なり、日常生活に支障はないが、音楽を聴いたり、ピアノを弾いたりする時には非常に不便ではある。正確には、絶対音感が完全になくなったわけではないのだと思う。中途半端に残っているというか。実際よりも高い調性で聴こえてくるのだ。ショパンのノクターン、有名なOp.9-2、あれがへ長調に聴こえてくる、ドラ~ソラソファ~・・・のように。これは混乱する。思わず移調して弾きたくなるし。

ピアノって、鍵盤位置と指の関係ってものすごく関連があるのではないだろうか?ドを弾いてもレと聴こえてくるから、当然混乱する。でも興味深いことに子どもの頃から馴染んでいる(聴き手として)曲は、自分で弾いても混乱が少ない。大人になってから知り、練習して弾けるようにした曲などの場合、混乱が大きいように思う。

ピアチェーレの選曲には、このあたりで悩み中だ。メフィスト・ワルツは、弾いたのは最近だが、曲そのものは子どもの頃から知っている曲だ。反対に、スティーヴン・ハフの曲などは、そのような意味で、非常に弾きにくい。途中で調性が浮遊してしまい、摩訶不思議なサウンドに聴こえてきてしまうのだ。弾きながら「今、どこを、なにを弾いているのだろう?」

メフィスト・ワルツの方が断然弾きやすい。ハフの曲は細かなパッセージも多く、調の変化も多いので、感覚が浮遊しやすい。そのようなことから、「リストだな・・・」と思ったわけだが、今はどちらにするか悩み中。

加齢に伴い、高く聴こえてくるというのは、僕だけではないようだ。青柳いづみこの著作にもそのあたりのことが書かれている。リヒテルがそうだったらしい。「イ短調で弾いてもロ短調に聴こえてくるので、我知らずにト短調に移調してしまいます」これはリヒテルの言葉だが、我知らず移調できるのが凄いというよりは、不便だろうな・・・と。リヒテルが暗譜をしなくなったのには、恐怖症というよりも、このようなことがあったことも関係しているのではないだろうか?

デ・ラローチャも高く聴こえるようになったという。でも彼女の場合は、引退まで暗譜で弾いていた。混乱はなかったのだろうか?青柳氏はこう分析する。「指が覚えていたからではないだろうか?」と。指使いを熟考し、曲を分析していく訓練をラローチャは受けていたと。反対に、晩学で耳と目、感性で曲を覚えたリヒテルは耳に頼れなくなった時に、楽譜に頼ったのではないかと。

僕の場合は、ラローチャ派ではなく、完全にリヒテル派だと自分では思う。こう表現すると何だか立派だが、確固な初歩教育、訓練が不足している。混乱もするだろう。リヒテルみたいに移調も得意ではないし。

「指が覚えていた」これってピアノ教育では「いけませ~ん」みたいなことなのだろうか?「耳で聴きなさ~い」みたいな?でもピアノって指運動のようなところもあるから、調性が浮遊してしまうのだったら、「指で覚える」というのも一つの方法ではなかろうか?

ハフにチャレンジしてみようか?リストにしておこうか?

人生を終末から逆算していく、この考えは今の僕の基礎となっているところがある。いつ死んでも後悔したくないために。僕が特に不器用なのかもしれないが、この考えをピアノライフにも応用すると、一点に盛り込み過ぎというか、どこか頑張ってしまうところがある。演奏会など、「これが最後の人前演奏かもしれない」と。一点に集中しすぎてしまい、演奏会を長いピアノライフの通過点というように考えることができなくなる傾向がある。

今年のピアチェーレも、ついついそう思う。まぁ、これは毎年そうだが。どうしても演奏会をチャレンジする経過点と捉えることができない。もうそろそろ、その演奏会という一点ではなく、長いピアノライフというものを線的に考えてみてもいい時期なのではないか?チャレンジして、舞台上で感覚麻痺というか、調性浮遊状態になって演奏が中断してしまっても、将来、加齢とともに、さらに浮遊するのだったら、「それでも弾ける方法」というものにチャレンジしてみてもいいのかもしれない。

そうは言っても、数日選曲に悩みに悩むとは思うが。

今はイタリアの歌手、マンゴの歌をよく聴いている。マンゴの葬儀の映像などを見ると、少し前までは「自分もいつこうなっても不思議ではないのだ。人生は有限なのだ」と思ったものだ。今も当然思うが、人生って一つ一つの点が重なっているものでもあるのではないか、そんなふうにも最近は思えるようになった。

kaz




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