ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

手術中のシューベルト 

 

「何かお好きな音楽はありますか?手術中にCDを流すこともできますよ?」日本でも手術中に音楽を流すことは、そう珍しくはないらしい。「あの、お任せしてもいいですか?」「それでもいいですが、やはりお好きな音楽を選んでいただいたほうが・・・」

たしかに、手術中に無音・・・というのも執刀側は気になるのかもしれない。厳粛な空気の中で、肉を刻む音と呼吸音が・・・というよりは、音楽でも流れていた方がいいのかも?でも思ったのだが、お気に入りの音楽が流れても、本人は麻酔で意識がないわけだから、執刀医やナースの好きな音楽の方がいいのでは?まさかノリノリでオペするわけでもないだろう。「いや、やはり選んでいただいたほうが・・・」

あまりに自己主張の強い、というか、濃い演奏は、いくら僕が好きでも避けたほうがいいだろうと思った。マリア・カラスの絶唱とか。なぜかショパン・・・とか、ピアノ演奏という選択肢は自分にはなかった。癒されない???いっそのことロック?

僕が選んだのはジュリアン・ブリームのCD。メインの手術中は聴くことができないわけだけれど、ストレッチャーに乗せられて光り輝く(?)手術室に入った時、ブリームのギターの音色に、かなり安心感を感じたのも事実だ。手術とか手術室なんて、極めて非日常性を感じさせるから、どうしても身体は硬直し、緊張してしまう。こちらは寝ているだけなのだが。そうした中、自分にとって身近な、知っている演奏というものは、心理的にかなりの救済があるのだと思った。

僕の場合は、単なる開腹手術だったが、開頭手術の場合、心理的プレッシャーは相当だろうと想像する。脳腫瘍の手術とかね。初めて知ったのだが、脳腫瘍の手術の場合、どれだけ一般的なのかは分からないけれど、「意識下」での手術が行われることもあるらしい。つまり全身麻酔ではないということ?「あらぁ、じゃあ、選んだ音楽が聴けるじゃない?」そういう問題ではないと思う。

意識下での手術、自分の頭が開かれているのに、意識がはっきりしているというのは、なんとも恐ろしい感じだ。でも理由があるらしい。それは後遺障害を避けるため。意識下の状態で、手術中に何か話してもらう、そうすることによって、患者の言語機能野を避けて腫瘍を摘出することができるらしい。また、予期せぬ事態が手術中に発生した時、「どうします?」という決定を患者に直接確かめることもできる。・・・う~ん、怖いなぁ。

腫瘍は摘出できたが、言語機能に障害が残るのは困る。アナウンサーや、声優など特にそうだろう。歌手の場合もそうだろうと思う。声帯や横隔膜にメスが入るわけではないが、言葉が出なくなったり、音感というのかな、音程などが取れなくなっても歌手生命は奪われてしまうだろうから。

手術中に歌唱している。それもシューベルトの「冬の旅」を歌っている。この人はドイツ在住のスロベニア人の歌手。レパートリーなのだろうか、おそらくこの人が最も恐れたのは、「歌えなくなること」ではなかったか?

なんとも心に染み入る歌唱だと思った。シチュエーションとしては、非常に恐ろしげではあるが、この歌手が歌を愛しているのが伝わってくるような?

映像としては深刻な感じの動画だが、美しい。血や肉が映像に出てくるわけではないので、そこは大丈夫。

彼の手術中のシューベルトを聴いていると、ふとオグ・マンディーノの言葉を思い出してしまった。

「絶対、絶対、絶対、絶対、絶対、絶対、あきらめるな」

kaz




にほんブログ村


ピアノ ブログランキングへ
スポンサーサイト

category: 未分類

tb: --   cm: 0

△top

コメント

 

△top

コメントの投稿

 

Secret

△top