ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

孤高のピアノ再開者 

 

イギリスのピアニスト、ジェームス・ローズの自伝「Instrumental」を読んでいる。このピアニストは、このブログにも何度か登場しているし、その半生も物凄いものだったと認識はしていたが、自伝を読む限り、物凄いというか、壮絶なまでの半生だったのだと知る。

本格的にピアニストへの修業を始めたのは14歳の時だという。割と遅めだと思う。ロンドンにあるらしいギルドホール音楽演劇学校という学校に入学する。そのまま順調な人生であれば、この人は音大(音楽院)卒のピアニスト・・・となったのであろうが、そうはならなかった。精神的な問題を抱え、それが表面化し、学校の奨学金を打ち切られてしまう。むろん、金銭的なことだけではなかっただろうが、ピアノはその時に挫折しているのだ。

後にロンドンの大学で心理学を専攻している。つまり、ピアノに関しては音大卒の専門家ではない・・・ということになる。もし、演奏と学歴というものが密接に関わっているのだとしたら、この人はどのような位置づけになるのだろう?

ピアノを挫折した人?何度もピアノの世界に戻ろうとしている。でも何度も挫折している。このジェームス・ローズはピアノ再開者なのだろうか?

自伝を読んで最も衝撃だったのは、6歳から10歳まで、4年以上もある男性から性的な虐待を受けていたことだ。年齢を考えると、レイプがローズ少年に与えた影響は大きかったと想像できる、というか、胸が痛む。おそらく、ローズ少年は自分を責めたのではないだろうか?

「僕がいけなかったから、あんなことがあったんだ・・・僕が悪いんだ・・・」

自傷行為を繰り返し、自殺未遂を繰り返す。精神科の病院に入退院を繰り返す。

なんとも切々と何かを訴えているような演奏にも聴こえてくる。自伝を読む限り、このピアニストは現在も悩み、苦しんでいる。精神的に病んでしまった時、離婚を経験し、現在でも自分の息子には一切面会できないのだという。そのことが彼を苦しめている。レイプを自分の責任と思ってしまったように、息子に会えないのは自分の責任であると・・・

でも常に音楽があったのだろう。それは遠くなったり近くなったりしたが、決してジェームスを裏切ることはなかった。

「かつて薬漬けになり、内側から崩壊していくのを感じた。でも音楽は薬の何倍も自分を癒してくれる」そうジェームスは言う。

あるカナダ人がジェームスの演奏に感銘した。そしてもう一度ピアニストを目指すよう後押しした。そのカナダ人は「なんだ、音大の中退者だろ?」などとは思わなかった。普通に聴いてくれたのだ。

ジェームス・ローズ・・・彼はピアノ挫折者なのだろうか?ピアノ再開者なのだろうか?音大を卒業していないのだから、ピアノに関しては素人さんなのだろうか?

kaz




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