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ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

「あなた・・・感謝しなきゃね?」 

 

癌患者同士の集まりのようなものがある。山登りをしたりとか温泉を満喫したりとか、同じ病を体験した人同士で集まる。僕は団体行動そのものが苦手なので、そのような催しには参加したことはないが、癌仲間のような友人はいる。どこかピアノ仲間と似ている。日常生活においては、ピアノや癌闘病などということにおいては、他人との接点がない。周囲はピアノなんか弾かない人ばかりだし、クラシック苦手族ばかりだ。癌を公にしている人も近所や職場には皆無だから、どうしても孤独に自分一人でピアノを弾いたり、病気と対面していかなければならない。なので同じような人がいるということが心に支えになったりもするのだ。

A子さんも、そのような癌友人の一人。彼女は二十代なのだが、子宮癌を患い、子宮切除している。なので子どもは産めない。A子さん自身は、子どもは欲しくないと決めていたわけではなかったが、社会人として働いていたし、結婚もしたばかりだったので、自分の生活設計というものの中に子育てというものは組み入れていなかった。むろん癌になってしまったことは残念だし苦しいが、子どもが産めないということよりも、自分の命をいかに存続させるか、どのように生活を営んでいくか、夫というパートナーといかにしてこれからを歩んでいくかということの方が重要だった。

「僕は子どもが欲しくて君と結婚したわけではない」

配偶者のこの言葉はたしかに嬉しかったが、A子さんも同様に子どもが欲しくて結婚したわけではなかったから、配偶者に対してひれ伏して涙するべきという感覚は持たなかった。でも周囲の反応は違った。

「昔だったら、あなたのような人は離縁されても当然・・・」「いい旦那さんで良かったね。あなたは幸せものだよ」「子どもはいらないなんて、気を使ってくれる優しい人なんだね」「将来浮気されても耐えなきゃね」

A子さんは「そうなの?」と思った。「私って人間として一人前ではなく、半人前で社会に役立たない人間なの?そのような人間は普通の人に感謝して暮らしていかなくてはいけないの?子供が産めない、産まないって普通ではないってこと?」

このような「あなたは子どもを産めないのだから・・・」という反応と、もう一つの反応にも傷ついたそうだ。

「まあ、なんて可哀そうな人なの?」「女として不幸な人」「いたわってあげなければ、可哀そうな人なんだから・・・」

むろん、言葉として直接言う人は少ないけれど、子宮癌を患った自分に対し、どこか気を使うような、特別扱いするような態度に接することは多かったらしい。

「子宮癌である私は不幸な人、子どもの産めない私は社会の役に立てない半人前の人間・・・???」

そのような中、同性婚とか同性パートナーシップ制度などに関するニュースを見て、そしてA子さんなりに調べたりするうちに、A子さんは、ある種の偏見は癌患者という自分だけにではなく、性的なマイノリティーの人たちにも向けられているのを知った。

「私なんかよりも大変な人たちがいたんだ・・・」

むろん、A子さんも同性愛者という人たちが存在しているのは知っていた。でも遠い世界の一部の特別な人たちだと思っていた。自分には関係のない世界の人たちのこと・・・

「えっ、このような人たちって、カップルとして部屋を借りることもできないんだ。パートナーが危篤になった時も家族として認められず面会すらできないんだ。どんなに愛し合っていて、一緒に暮らしていても法的にはただのお友達、ルームメイトという扱いになってしまうんだ。私たち夫婦のような男女のカップルが普通に認められていることも全く認められていないんだ・・・」

同性婚に反対する人たちの意見は、性的マイノリティーに属する人たちだけではなく、A子さん自身にも向けられているようにも感じた。「結婚という制度を同性同士のカップルに認めるのはおかしい。彼らは子孫を繁栄させることができないのだから」「少子化に拍車がかかるじゃないか?」

すべて自分に向けられているようにも思えた。

子どもが産めないと半人前?パパとママ、二人の子ども、一家団欒・・・これが実現できないと普通じゃない?おかしくない?私だって普通の人間よ?違うの?

A子さんを苦しめていたのは癌ではなかった。子どもが産めないことはマイノリティーに属してしまう。自分は特別、どこか異端・・・社会はマジョリティの風が吹いている。パパとママ、子どもとの団欒・・・むろん、そこに価値を見出す人もいていい。でもそう感じるべきということでもないのでは?別のところに価値を感じる人がいたっていいのでは?マジョリティの風が圧力となってA子さんを苦しめていたのだ。無言の無意識の差別がA子さんを苦しめていた・・・

明日から新年度。東京都の渋谷区の同性パートナーシップに対する証明書発行が始まってちょうど一年になる。明日から三つめの自治体で同じような証明書の発行が可能になるのだという。

進んでいるのか?停滞しているのか?

「みんな仲良くしましょうね?」幼稚園児に諭すようなことが、大人にとって、これほど難しいこととは・・・

kaz




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