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ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

ブリュッセルに寄せて 

 

ヤツェクはイレナの言葉が信じられなかった。

「何故なんだ?何故君がドイツに行かなければならないんだ?」

「私は小児科医よ。苦しんでいる子供たちがいれば助けたいと思うのは当然でしょ?短期間のボランティアだわ。あなたが反対するとは思わなかった」

「反対するに決まっているじゃないか?僕たちはポーランド人でありユダヤ人じゃないか?あいつらに何をされたか、まさか君は忘れたわけじゃないだろう?君のお父さんがドイツ人に何をされたか、僕の両親があいつらにどうやって殺されたか・・・」

「もちろん忘れたわけじゃないわ。でもドイツ人が全員ナチスだったわけじゃない」

「僕はドイツ人が憎い。あいつらは死の壁で僕の両親の頭を打ちぬいた。僕は絶対にドイツ人を許せない」

「あなたは憎しみしかドイツ人に感じないの?」

「当たり前じゃないか!!!」

「許せないの?」

「君は許せるって言うのかい?」

「分からない・・・分からないの・・・だからドイツに行くのかもしれない。憎しみを消したいの」

「消す必要なんかない。我々ポーランド人、ユダヤ人は被害者なんだから・・・」

「そうだけど・・・でも憎しみの感情に支配されていたらナチスと同じだわ」

「なんてことを・・・」

「そうよ!同じだわ。私は憎しみの感情を持ちながらこれからの人生を送りたくないの。それじゃナチスと同じだから」

「同じじゃない」

「同じよ・・・憎しみではない何かを感じるべきよ・・・愛のような・・・」

「愛だったらユダヤ人のために感じるべきだ」

「違うわ・・・同じ人間なのよ?憎しみの感情を消したいの・・・」

「僕には難しい・・・難しすぎる・・・」

「同じ人間同士が憎みあうなんて・・・それは間違っていると思うの。私にも難しい。でもイヤなの。だからドイツに行くの。人間はみな同じだと感じたいの。そうしないとこれから生きていくのが難しいから・・・」

ヤツェクとイレナはその後結婚した。そしてHという息子が生まれた・・・

ブリュッセルに寄せて・・・

kaz




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