ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

指輪 

 

ゲイであることをカミングアウトしたクラシックのピアニストって少ないような気がする。周囲で「ねぇ、あの人絶対にそうよねぇ?」的に噂される人は多いのかもしれないが・・・

僕の知る限り、カミングアウトをしているピアニストは、スティーヴン・ハフ、そしてユーリ・エゴロフ。ハフは現代のピアニストだが、エゴロフは70~80年代のピアニストだ。カミングアウトそのものの重みが異なるような気はする。

エゴロフがソビエトから西側に亡命したのは1976年。最終的に彼は安住の地としてオランダを選んだ。むろん、同性婚など正式に認められてはいなかった頃だけれど、当時として最も革新的な空気に満ち溢れていたのがオランダだったのではないだろうか?

ユーリ・エゴロフの写真には左手薬指に指輪をはめている写真がある。気軽なスナップなどではなく、正式な商売用(?)の写真。この指輪はエゴロフの意識的行為のようにも思える。ゲイとしてカミングアウトしての、この指輪は「愛していれば結婚するでしょ?男と女だったら普通でしょ?男と男だって普通だよ?」という強い彼のメッセージを感じたりもする。

マイノリティに属してしまうと、どうしても「強くならなくてはならない」という面もあるんじゃないかな?世間一般では「普通ではない人」となるわけだから。その勢いに負けてしまうと自分を否定しなければならなくなる。「生まれてこなければよかったのかな?」「自分は変態なのだろうか?」

むろん、人間には誇りがある。でもその誇りに忠実に社会で生きるためには、相当のエネルギーを必要とする。

薬指の指輪はエゴロフのエネルギーだったのかもしれないね。

ゲイというだけで多くの偏見があった頃だ。エゴロフは1988年にエイズの合併症で亡くなっている。どこまでエゴロフは自分の病気のことを隠し通したのだろう?空気感染する、触れただけで感染する・・・などという誤った認識もまだまだ残っていたのではないだろうか?オランダでさえも。もしかしたらエゴロフはゲイへの偏見、そしてエイズへの偏見というものと闘いながら演奏していたのかもしれない。

33歳で亡くなる数ヶ月前、エゴロフは愛するオランダ、アムステルダムでリサイタルを行っている。これが彼の最後のリサイタルとなった。ここでシューベルトを弾いている。

「シューベルトは苦しい音楽ではないと思う。哀しいんだ。でも控えめ。控えめな哀しみなんだ」  ユーリ・エゴロフ




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