ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

残酷な美音 

 

その国だけで知られていて、実力も備わった、いわばローカル的なピアニストは多いのだろうと思うが、世界的に有名なピアニストであるが、何故か日本ではあまり知られていないピアニストもいる。欧米での評価と日本でのそれと、大きく隔たりのあるピアニストとでもいうのだろうか。

コルトーやリパッティの演奏を聴いたことがないというピアノ仲間は結構いて、僕は驚いたりするのだが、聴いたことはなくても、名前だけは知っていたりする。でもソロモンというピアニストのことを知っていたピアノ仲間はいなかった。名前すら知らないのだ。ヨーロッパや北米では巨匠的な扱いですらあるのに・・・

ソロモン・カットナー・・・イギリスのピアニストだ。普通はファーストネームだけで呼ばれる。ソロモン・・・と。多くのピアニストがそうだったように、ソロモンも天才少年としてデビューしている。たしかデビューではベートーヴェンのコンチェルトを演奏したのではなかったかな?ソロモンが10歳の時だ。彼の天才ぶりは大いに話題になったらしいが、ソロモンは一度引退(!)し、10代後半でまた演奏を再開している。

ソロモンの演奏では、特に「静謐なタッチ」「研ぎ澄まされたタッチ」というものに僕は惹かれる。なにしろ美音なのだ。おそらく日本式タッチの根本概念である「しっかり弾きましょう」「鍵盤の底まで弾き切りましょう」的なタッチとは正反対のところにある究極のタッチであり、音・・・なのだ。

日本でソロモンが有名でないのは、彼のタッチや音、音楽そのものが、何かを聴き手に突き付けてくるからではないだろうかと個人的には感じたりしている。「あなたの弾き方、あなたの音、そのカツーンといつでも鳴らしきってしまう音でいいの?」とでもいうようなメッセージをソロモンの弾き方は日本の聴き手、ピアノ弾きに突き付けてしまう・・・

ソロモンの音を肯定してしまったら、多くのピアノ弾き、ピアノ教師は自己のタッチ、弾き方を否定しなければならない、これまで積み上げてきたものを全否定させられてしまうような?

なのでソロモンは聴かない・・・のではないかな?どこか辛いし、一生懸命「学習ピアノ」「お稽古ピアノ」の道を進んできたような人にとっては、ソロモンの音はどこか残酷なものだろうとさえ思う。

やはりソロモンの演奏ではベートーヴェンが有名で、それを聴くべきなのかもしれない。個人的には彼のモーツァルトとブラームスが好きだ。ソロモンはショパンも演奏している。ゲルマン系の作品の影に隠れた印象のソロモンのショパンだが、彼の美音、静謐なタッチ、そして、お稽古ピアノ弾きに残酷さを最も突きつけてくるのが、ソロモンのショパンなのではないかと思ったりもする。

ソロモンは結構長生きしているのだが、活動期間は極めて短い。演奏活動の最盛期に脳梗塞を患い、指が動かなくなってしまったのだ。美音は短命だったのだ。美音だからこそ・・・なのかもしれない。音楽の神はソロモンの音を愛しすぎたのだろう。独占してしまった・・・

kaz



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