ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

なんでピアノ辞めちゃうの? 

 

「音大に行きます」などという子どもは別として、多くの子どもはピアノを辞める。中学進学を理由に辞めるケースがやはり今も多いのではないかと思う。せめて15歳あたりまで続けてくれれば・・・と願うピアノ教師は多いだろう。

辞める理由としては、これまでにも沢山語られてきた。忙しくなるとか・・・

たしかに忙しくなるのだろうとは思う。ピアノは家で練習しなければならないので、そこが問題となる。練習しなければ上達は難しい・・・という意味においての、練習の必要性は、すべての子どもが理解しているところだと思う。でもできない、しない。その理由は、練習の目的が示されず、何のために練習するのかを把握していないからではないかと思う。子どもだけではなく、大人もだが、何のために練習が必要かという根本を理解できていなければ、わざわざ練習なんかしないだろう。苦しいだけだもん。

何のために練習するのか?

「上達するためじゃない?」

そうだろうか?ピアノを習うのは、弾き続けるのは上達したいため?

おそらく、このあたりがピアノを辞めてしまう大きな理由となるように思う。多くの人は上達することを目的だと思う。でも僕は違うと思っている。上達することは、目的ではなく、むしろ手段に過ぎないのではないかと。

これは全く個人的な考えだが、音楽から受けた心の動きというものは、「きゃっ、素敵!」とか「あら、いい曲ね」というものよりも、相当深いもののように思える。人生というものが困難の連続で、苦しみだらけだったとしても、音楽というものは、その人の何かを救うというか、絶対に裏切らない何かというか・・・

人生の遠く先には、音楽から受けた心の動きのような、光のような瞬間が絶対に存在しているのだと思える幸福感とでもいうのだろうか?そんな感じ・・・

その聴き手としての強烈な想いを、空気に音の塊として乗せたいという願望が起こる。空気に乗せた音が浮遊し、だれか一人でも自分の中の光、音楽から貰った心の中の光のようなものをキャッチしてくれたら・・・・

だからピアノを弾く、そのために上達したいと思うのだ。上達というところが最終ゴールだと思っていたら、ピアノなんか練習しなければならないし、人前では緊張するし、日常生活が犠牲になるところも多いし、弾く気も失せるだろうと僕は思う。

自分の中にある何か、その光のようなものを空中に乗せたい、放出したい。マグマのような熱い何かを外に出したい・・・という強烈なまでの欲求・・・誰かがキャッチしてくれたら「生きていてよかった」とさえ感じられるだろう、そのような想い。

スーザン・ボイルという歌手の名前は知っていたが、歌唱を聴いたことはなかった。有名な、彼女を世に送り出したオーディション番組の動画も見たことはなかった。

冴えない中年の女性が、その風貌からは想像できないような歌を歌った・・・というところで有名になった動画だと思うし、一般の女性が夢を実現したサクセスストーリーとして有名になった動画でもあるだろう。

スーザン・ボイルはアスペルガー症候群なのだそうだ。アスペルガー症候群については、各自調べて頂くとして、基本的に、子どもの頃から彼女は人と関係を結ぶのが難しかった可能性が強い。また、社会生活を営むということにおいても、そうとう苦労を重ねてきたと想像できる。このオーディション番組に出演した時には、彼女は47歳で、無職であり、男性とキスをしたこともないと自ら語っている。

どこか、意識的にはしゃいだような印象を与え、自分の本当の姿を隠して、内面を探られるのを拒否しているような、独特の話し方が、どこか哀しさを感じさせる。

でも、彼女には歌があったのだ。歌う時だけは、本当の自分でいられた。チャンスとか成功とか、華々しい人生ではなかったけれど、歌が私を救ってくれた。歌は私の光なの・・・

審査員も聴衆も、彼女が歌い始めると、「えっ????」と惹きこまれていく様子が興味深い。上手さ、声の素晴らしさだけも、最初の瞬間は聴き手のテンションを集めることはできる。でも彼女は最初だけではなく、歌の最後までそれを持続することに成功している。

彼女は自分の想い、自分の光を会場の空気に放ったのではないかな?「歌は私の光なの・・・」「歌だけは私を裏切らなかったの」

それを人々がキャッチした・・・

音楽から何かをキャッチしてしまえばいい。そうすれば人生において、「ピアノを辞める」という選択は消える。辞める・・・ではなく「中断」になるわけだ。

ちなみに僕の中断は30年。でも今はピアノを辞めていた・・・とは感じていない。

kaz



にほんブログ村 クラシックブログ ピアノへ
にほんブログ村


ピアノ ブログランキングへ
スポンサーサイト

category: The Singers

tb: --   cm: 2

△top

コメント

 

先入観

kazさんが30年の中断とは、信じられないですね。。それであんな風に弾けるのは凄いです。。
私は30年まではいきませんが、3日とか1週間以内くらいなら時々「中断」します。すると、「ああ、弾きたい!」という気持ちが高まるので、長続きのコツは時々休むことかも・・なんて思ったりします。(^^)

スーザンは、年齢や外見から受ける印象による「先入観」を見事に吹き飛ばしてくれましたが、もうひとつ、良くありがちな先入観・・「人生経験によって音楽表現が良くなる」というのも吹き飛ばしてくれましたね。
キスもまだというのに、観客も審査員も感動の渦に巻き込みました。とても素敵な証拠になってくれた気がして嬉しいです。

往年の大女優Yさんが、「色恋は芸の肥やし」という考え方に対して「芸はそんな甘いものじゃない」と一蹴されたそうで、人の人生を演じる女優さんでさえそうなら、音楽の感動は尚更、そういう事ではないと思います。

それにしても、本当に堂々と、素晴らしい歌い振りですね。感動しました。ご紹介ありがとうございます。

Megumi #3/2tU3w2 | URL | 2015/09/03 02:20 | edit

Megumiさま

僕はスーザン・ボイルに対して先入観を持っていました。テレビ番組が創りあげた歌手なのだろうという先入観。なので、名前しか知らなかったわけです。

もしかしたら、「ありのままを聴く」「ありのままをキャッチする」ということは意外を難しいものなのかもしれません。特に、自分が楽器などを弾いているとそうなりがちなのかも・・・

kaz #- | URL | 2015/09/03 12:06 | edit

△top

コメントの投稿

 

Secret

△top