ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

感情の画一化 

 

子どものコンペティションなどで、小学生が恍惚の表情や苦痛表情で天を仰いだり、激しいモーションで格闘技のように演奏したりする・・・かなり不自然なものを感じている人は多いはずなのに、なぜにそれが主流なのだろう?どう見ても、どう考えても、それは子どもからの自然発生的なものではないので、意図的な操りがあるのだろうと思う、実際、指導者が指示しているのだろうと思う。「この部分ではこの角度で顔をこの方法へむけて、このような表情で・・・」のように。どこかおかしい・・・

おかしいのだが、誰も何も言わない。この場合は相手が子どもなのだから、指導者の責任だろうと思う。そのような達者な子どもは、やはり才能があるので、成長して大人のコンクールなどにも出てくる。大概は有名音大などで学んでいたりする。この場合は、もう子どもではなく大人なのだから、「自分・・・もしかして変?」などと思う人もいるのかもしれないが、でも大人のコンクールでも顔面弾き、苦痛入魂弾きは主流だ。普通に演奏していては不利なのだろうか?音大の指導者も指摘すればいいのにと思う。「苦しそうね?どうしたの?」とか「ねぇ、普通に弾いたら?」とか・・・

言わないのだと思う。何故だろう?

往年の巨匠だけではなく、現代の演奏家でも国際的に活躍している人は、顔面弾き、入魂弾きの人は意外と少ないように思う。アルゲリッチが天井を見上げて白目をむきだして弾いているのを見たことはないし、普通に弾いているのでは?演奏そのものは普通ではないけれど、視覚的には普通に弾いているように思う。

コンクール、コンペティションというものが関わっているのだろうか?そうなのかもしれないし、その部分に過去の安易な反省、つまり表情豊かに・・・ということを安易に外面だけ取り入れてしまっているということのミックスなのかもしれない。

クラシック音楽とは無縁、クラシックは苦手という人が達者な子どもの百面相パフォーマンスを見たら、「すご~い!こんなに小さいのに!」とは思わないのではないだろうかと想像する。「なにこれ~・・・変なの・・・気持ち悪~い・・・」という反応なのでは?

誰かが「王様・・・裸だよ?」と叫ぶ時がくるのであろうか?

ただ、聴衆にも責任があるのではないかという気もする。そのような入魂パフォーマンスを歓迎するところがあるのでは・・・と。

雁部一浩著「ピアノの知識と演奏」の中に聴き手として、ドキッとするような文章が書いてある。

「演奏家の資質として問題になるのは、感情が強く、にもかかわらず多様性に欠けるケースです。その場合、作品のもつ多様な音表情の中のある一つの要素に強く共感し、その感情に囚われて演奏が一本調子となり、さらに自分自身の演奏によって一層その感情が昴るという悪循環が生じます」

ベートーヴェンの作品で額にシワを寄せてとか、ショパンのカンティレーナで甘さに溺れてとか、これは顔面パフォーマンス、苦痛入魂パフォーマンスの特有のものであるようにも感じる。この本では次のようにも書いている。

「演奏者自身はそれなりに、作品への共感を抱いて満足しているだけに始末が悪いのです」

おそらく、誰も何も言わないというか、まず演奏者自身が疑問に感じない理由はここにあるのでは?

「困ったことに、この類の情熱的な演奏が思いのほか聴衆の喝采を浴びる傾向なしとしません。というのも演奏者と同じく聴衆の側の感情もまた多様性に欠けていれば、いきおい特定の感情の強さが共感を呼ぶことになるからです。ともすると繊細で密度の濃い演奏よりも大味で情熱的な演奏の方が一般に好評を博したりする理由はここにあると考えられるでしょう。いわば奏者と聴衆とが共犯となって演奏を画一的な興奮へと駆り立てるわけです」

「そのような興奮の渦中にあって、おそらく少数の心ある聴衆は退屈と疎外感を味わうに違いありません」

聴き手としてそれは感じている。だから古い演奏家に走るのだと思う。そこには本来の演奏があるから・・・と。でも少数・・・なのだろうか?そうではないと僕は楽観的に思ったりもする。「変だよね?」と心の中で感じている聴衆は多いはずだ。でも多くの人はクラシック音楽そのものを見捨ててしまうのかもしれない。「つまらない」「難しい」「自分には高尚すぎて」と。

ジノ・フランチェスカッティ・・・

個人的にはそれほど古い演奏家だとは思わないが、この人の演奏は大好きだ。大変な超絶技巧の曲を演奏していて、たしかに指は忙しそうだ。楽譜はどうなっているのだろう?

でも弾いている基本的な姿は大騒ぎをしていない。ただ弾いているのだ。ここがいい。最近はヴァイオリニストも蛇のように弾く人が増えたような気がする。「パッションを感じる・・・」「情熱的!!!」のような感じがするのだろうか?フランチェスカッティにしてもハイフェッツにしても、技巧派として有名だが、以外と演奏姿は静かなものだ。

この音楽、演奏に興奮を覚える。身をくねらす演奏姿や恍惚表情や汗ではなく・・・

kaz



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