ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

聴衆が育てる時代 

 

サンドロ・ルッソのレパートリーは、どこか、かつての往年のピアニストの作品をも追っているところがあって、そのあたりはスティーヴン・ハフと共通している。思えば、昔はピアニストも自分で作曲したり、編曲したりするのが普通だったのだ。ショパンやリスト、皆がコンポーザーでありピアニストだった。完全分業制になってから、どうもピアニストの演奏がつまらなくなってきたように感じるのは僕だけであろうか?

グリゴリー・ギンズブルグなんていうピアニストの演奏や、作品なども今では忘れられた存在であるのかもしれない。でも、これからの時代は、必ず復活するであろうと僕は思っている。ルッソが弾いているのは、ルドルフ・ロジツキという人の曲をギンズブルグが編曲した、オペラ「カサノヴァ」より、ワルツ・・・という曲。まぁ、珍曲なのかもしれない。僕もギンズブルグ本人以外の演奏は初めて聴いた。でも、なんていい曲なんだろう・・・と思う。

好きなピアニスト(歌手)、レパートリー、どこか僕の好みとサンドロ・ルッソのそれとは一致するのだ。

彼はシチリア生まれで、家族も音楽大好き一家だったようだ。ただ、プロの音楽家ではなかった。彼の母親はピアノというものに憧れを持っていたらしいが、自分自身は習うことができなかった。時代的なものもあったのかもしれない。なので、二人の息子にはピアノを習わせたかったのだ。サンドロ・ルッソもピアノを4歳の時に習うのだが、兄のレッスンを聴くうちに、自分でも弾いてしまった・・・というのが本当のところらしい。つまり、正式に読譜から、指の上げ下げから、というのではなく、耳で覚えて弾いてしまった。このあたりは僕と似ている。彼の場合、楽譜を習わなくても、模様的に認識していたようで、譜めくりなどはできたそうだ。これも僕と同じだ。僕の場合、「この音は何?」とレッスンで問われると、懸命に五線を数え、「えっと、ミとソ?」などと答え、「違うじゃない!ファとラでしょ?なんど教えたら理解できるのよっ!」などと怒られてばかりだったが、楽譜を模様としては認識していた。なので、僕も譜めくりはできたと思う。

導入期に優れた指導者と巡り合えなかったというところも、つまり、どこか自己流要素と共にピアノを弾いてきてしまったというところも僕と似ている。彼の場合全く教えた経験のない学生から習ったりとか、そんな感じだったらしい。シチリアはミラノではなかった・・・ということなのだろうか?そんな感じで彼は10代の半ば、つまり中学生あたりまでいってしまったらしい。僕との決定的な違いは、僕はピアノそのものを辞めてしまったけれど、彼の場合は、そこで優れた指導者に巡り合っている。ゲンリヒ・ネイガウス門下のロシア人ピアニスト、教師との出逢いだ。そこで彼が、もともと持っていた音楽発散才能と、導きというものとの幸運な一致があったのだろうと思う。サンドロ自身、「僕はロシアのピアノを習った、影響はイタリアのピアノ教育ではなくロシアのそれだった」と語っている。

以後の彼は、他の多くのピアニストの経歴とそれほど変わったところはないように思う。いくつかのコンペティションを経験し、受かり、地道に演奏活動をしていた。華々しく国際的にデビュー、CDもメジャーのレーベルからバンバンと・・・という活動ではなかった。でも、彼の演奏はユーチューブという媒体で人々に知られるようになっていった。人々は、そこに現代のコンクール勝ち組からは聴くことのできない、本来の音楽を聴いたのだ。サンドロ・ルッソというピアニストは聴衆が発掘したピアニストでもあるのだ。

一応、彼は日本でも演奏している。大手の○○音楽事務所が招聘するような有名ピアニストのように、大都市有名ホールで演奏していく・・・という形ではない。でも日本にも多くのファンが存在するし、日本語のページ、それもファンが管理するページも存在している。おそらく、日本だけではなく、世界中に同じようなファンは存在しているように思う。

コンクールというものを通過しなければ、世にでることさえできない・・・そのような時代は、そろそろ終わりになるのではないだろうか?つまり「○○コンクール第1位」とか、それに伴う「○○レーベルからCD発売」のようなピアニストがスターピアニストなのだという認識が終わる。なぜなら、聴衆が動いているからだ。聴き手のニーズが変わってきているからだ。変わった・・・のではないのかもしれない。情報というものに振り回された結果、やっと本質、自分がいいと思えるものを自分たちで発掘し、応援し、育てていくという本来の姿に戻りつつある・・・そのような時代・・・

聴衆が求めているのは「弾きこなし度」ではないのだから・・・

サンドロ・ルッソの演奏・・・

この演奏は、彼が「ピッポのように弾きたい」と願い、そしてそのように弾いた演奏ではなかろうか?

kaz



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