ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

異端への恐怖 

 

翼のはえた指―評伝安川加壽子 (白水uブックス)翼のはえた指―評伝安川加壽子 (白水uブックス)
(2008/01)
青柳 いづみこ

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この本は以前に読んでいる。普通に一人のピアニストの生涯を追うという読み方もできようが、もう一つの読み方もできるように思う。それは「異質なものが入り込んだ時、既存の価値観の持ち主がどのように反応するか」というところに注目する読み方。

当時の日本のピアニスト、ピアノ教師たちの重ねてきた苦労というものは、想像ができないほど厳しいものであったに違いない。情報の少ない中、西洋音楽というものに、そして西洋文化そのものに憧れ、何もないないところから、一から必死に築き上げてきたものも多かったと思う。何時間も練習し、修業し、楽しいことも我慢してきた。それはピアノの上達のため。西洋に追いつくため。そして、ストイックとも感じられるような、日本独自の演奏、指導というものが出来上がっていった。

そこへフランスから異質なピアニズムがやってきた。

「あ・・・なにか違う・・・全然違う・・・」

すんなりと、そのフランスピアノを受け入れた人もいただろう。「あら、なんて素敵なの。これまでのピアノの演奏って何だったの?」

カルチャーショック・・・

でも、到底受け入れられなかった人達もいたのだ。「もし、あれが主流になってしまったら、私たちはどうなるの?今まで苦労して身につけてきたものは何だったの?いえ、私たちがやってきたことが正しいの。主流なの。あちらが異端なの」

人間は一人だと孤独になる。心配になる。なので、同じ価値観を持つ者同士で固まろうとする。「こちらが主流よ、私たちが正しいの。さあ、連携しましょう・・・」

子どもたちをバリバリと鍛え上げ、コンクールに出場させる。

「ピアノはこう弾くべき・・・それ以外のものなんて、ありえない・・・」

「火鉢で手を温めながら、そして手先が割れ血が出るまで練習したのよ。正しいに決まっている・・・」

当時の日本の主流派はフランスピアニズムに一種の恐怖感を抱いたのではないだろうか?「もし、あちらが主流になってしまったら?」と。なので固まった。グループになれば心強いので、○○派のようなものさえ出来上がっていった。

「この国で力を持つ前に排除してしまいましょう。それが無理なら、異端派としてしまいましょう・・・」

恐怖心・・・

この本は、「斜め読み」すると面白いと思う。

kaz



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category: ピアノの本

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