ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

大人の判断 

 

旅は日常の生活というものから思考を分断してくれるので、なんとなく暮らしている時には、あまり考えなかったことも頭の中で駆け巡ったりもする。キラキラと輝く波を見ながら、これからのことを考えたりもしている。

「ピアノは辞めることはできるけれど、音楽を辞めることはできない」

自分の音楽半生を振り返ると、失敗続きだったのかなとも感じたりするけれど、ピアノを弾いていなかった期間も「音楽」とは常に一緒だったという感覚は非常に強い。この感覚は、とても大きな幸福感を僕に与えてくれる。

今までは、自分の子ども時代のピアノライフ、レッスンというものを、どこか否定してきたところがあるのだが、今は、そうでもないような気もしてきている。これはイタリアの魔力による魔法のせいかもしれないし、旅というものの高揚感がそう感じさせているのかもしれないが、子どもの頃の自分を肯定してもいいのではなかったかと・・・そう思い始めている。

子どもの頃のピアノのレッスンは上手くいかなかったし、先生との関係も良好ではなかったような気がする。音楽、ピアノは好きだったけれど、レッスンは大嫌いな子どもだったのだ。練習も嫌いだった・・・というより、レッスンのために曲を弾けるようにするという練習は嫌いだった。でも、自分で好き勝手に弾いたり、ショパンなどを自分で、こっそり弾いたりすることは大好きだった。つまり、自己学習は大好きだったのだ。これは否定しなくてもいいのかな・・・と。

ピアノ教育というものは、僕が子どもだった昭和40年代と比較すると、飛躍的に進歩しているのだろう。レッスン方法や、教材や、情報の横の共有など。でも、あまり変わっていないのかぁ・・・などと感じることもある。それは「子どもの、その時の、目の前の状態だけで、大人独特の判断をしてしまう」ということ。

一時(今もか?)、ピアノを弾く、ということは、脳にとてもいいことで、ピアノだけではなく、学校での学業にも、いい影響がある。なので、ピアノという習い事はいいのです・・・みたいな「子どもに習わせるべき習い事の1位はピアノです」的記事が沢山あった。実際にそうなのかもしれないが、学校の成績のことを考えてピアノを習わせるなんて、あまりにも悲しすぎないか?

「成績優秀」=「いい学校に進学」=「大企業に就職」=「幸せな人生」

これは、大人からみた「~であろう」という子ども像を、実際の目の前にいる子どもたちに、当てはめているような気もする。

ジリアンという女の子がいた。ジリアンは、大人(学校の先生たち)からすると、困ったちゃんだった。落ち着きはないし、授業にも集中できない。宿題も期限内に提出できない。他の子たちにも悪い影響を与える・・・

先生は母親に言った。「困るんですよね。学習障害なのではないでしょうか?」

まだADHD(多動性障害)などという概念もなかった時代のことだ。母親は専門医のところへジリアンを連れていく。

「この子は病気なんでしょうか?何か障害を持っているんでしょうか?学習障害なのではと教師から指摘されました」

医師は、ジリアンの様子をじっと観察し、やがてこのようにジリアンに言った。

「ジリアン、少しお母さんとお話ししてきたいんだ。この部屋で一人で待っていてくれるかな?」医師はジリアンに言うと、ラジオのスイッチを入れて、母親と部屋を出た。

ジリアンは静かに座っていることができなかった。ラジオから流れてくる音楽に合わせ、身体を動かし始めた。隣の部屋からその様子を見ている医師と母親・・・

「ほら、あんなに落ち着きなく・・・」

「お母さん、ジリアンは病気ではありません。ジリアンはダンサーなのです」

「えっ?」

「頭より先にジリアンは身体で考えるのです。ジリアンをダンススクールに通わせてあげなさい。彼女はダンサーです」

医師はジリアンを薬で押さえつけようとしなかったし、母親も医師の助言を信じ、ジリアンをダンススクールに通わせた。

「こんなに幸せな瞬間があったなんて・・・」ジリアンは初めて身体で考えることを肯定できたのだ。ダンススクールには、ジリアンのような子どもたちがたくさんいた。落ち着きがない、集中できない・・・ではないのだ。ただ頭ではなく、まず身体で考えてしまう子どもだっただけ・・・

ジリアンは、ロイヤルバレエ学校に進み、そして自分のダンスカンパニーを設立した。やがて、アンドリュー・ロイド・ウェバーと知り合い、彼の代表作の振付けをすることになった。「キャッツ」「オペラ座の怪人」など、ジリアンが振付けした作品は世界的なヒットとなった。

学習障害ではなかったのだ。ただ身体で考える子どもだったのだ。

kaz



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