ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

同化 

 

ラフマニノフとフリードマン、同じ曲を演奏したとしても随分と違った演奏に感じる。別に往年のピアニストに限らなくてもいいだろうと思う。たとえば、現代の名手、スティーヴン・ハフの演奏と聴き比べてみてもいいかもしれない。人は、その演奏の違いには敏感なのだと思う。でもより大切なのは「共通していること」ではないだろうか?ラフマニノフ、フリードマン、ハフ・・・表現として必ず共通していることがあるはずで、これが「伝統」というものではないかと・・・

伝統を踏まえるということと、ただ楽譜通りに弾くということとは本質的に異なる。楽譜から逸脱しているように聴こえても、必ず守っていること、楽譜通りに演奏しているようでも、必ず聴き手に伝わるファンタジーのようなもの・・・

もしかしたら、楽譜通りに弾いているだけのように聴こえる演奏というものは、楽譜通りに弾いていないからそう聴こえるのかもしれない。

ただ、最近は作品と演奏者との間に関わりが見いだせない演奏というものも多いように思う。おそらく、専門的な観点というものを通せば、それらの演奏も意味のあるものと感じるのかもしれないが、演奏を聴く人はすべてが音楽家ではないし、演奏家でもない。そして聴く側が「お勉強」をしなければ通じない演奏というものすべてがいい演奏なのかは個人的には疑問に思う。

「ここはフォルテと書いてあったからそのように弾いているのです」という、作品と対話していない残念な演奏、それは奏法というものとも大きく関わってくると思う。どんなに感情を込めて(感情を込めるということがどういうことなのか不明だが)、心を込めて弾いても、打鍵(タッチ)のスピードが一定、または大雑把では聴き手には演奏者の意図は伝わらないだろう。演奏なのだから、具体的な伝達方法が存在しないかぎり、どこか独り言のような演奏になってしまうと思う。

個人的な感想だが、この奏法の欠陥というか、不備からくる音色の多彩さの犠牲、欠如を、どこか曲の外部構成というものだけで埋めていこうとする人が多いので(そのように教える人も多いので?)、結果的には「丁寧に楽譜を読みこみました。でもそれだけです」のような外側から(だけ)埋めているような演奏が多くなってしまうのではないかと感じている。

いくら心を込めても・・・と書いたが、その肝心の心がそもそもあるのか?

それを言ってはお終いよ・・・みたいなところはあると思うし、心のない人なんて存在しないわけだから、言葉にするのが困難なところだけれど、現代というもの(というより、コンクール時代以後というか)は、演奏家の存在、価値というものが随分と低いようにも思う。かつては作曲者も演奏家であったわけで、分業化する以前の時代は同等であったのかもしれないが、現代では、なんとなく作曲者の精神に比べ、演奏家の精神というものが低くて当たり前というか、演奏者自身の内部から生まれてくる、正確には曲というものと演奏者の内部からのものとの合体、交流のようなものを目指すこと自体、偉大な作曲者に比べ豆粒のような私たち演奏家は断じて許されない・・・のような厳しさに満ち溢れているような気もしてくる。これは愛好家としての、素人としてのあまりにも幼い勘繰りなのだろうか?

そうかもしれない・・・

でも演奏家も人間なのだよ?一人の人間。無名のAさんというピアニストの人生が、ベートーヴェンの人生に比べ、石ころのようで当然とは全く僕には思えない。同じ人間だもの。

ピアノを演奏する人、プロとかアマチュアとか、初歩とか上級とか関係なく、すべての人に人生がある。その各々の人生の中には自分の命よりも大切な存在だってあるはずだし、守ったことだってあるかもしれない。逆に自分が他人から守られた経験を持つ人もいるだろう。自分の命よりも愛しいと思える存在だってあるし、そのように思われることだってある。偉人の人生にだけにあるものではない。その愛しい人の笑顔、見るたびに、あるいは想い出すたびに胸が熱くなること、心臓が痛くなることはないだろうか?

僕はある。その人の笑顔や、声、横顔、想い出すだけで心が動く。

このような生きている人間(演奏者)の心の動きを偉大な作曲家の作品に通したいと思う、あるいはその中に反映させようとする、同化させようとするのは、豆粒のような存在である我々には許されないことなのだろうか?

自分の生きてきた人生の中で、最も大切な人(存在)、その人(存在)を想い、曲として、演奏として同化させてはいけないのだろうか?

kaz



にほんブログ村 クラシックブログ ピアノへ
にほんブログ村


ピアノ ブログランキングへ
スポンサーサイト

category: ピアノ雑感

tb: --   cm: 0

△top

コメント

 

△top

コメントの投稿

 

Secret

△top