ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

グランドピアノで練習していたらピアノは無理よ! 

 

一昔前はホロヴィッツの弾き方は異端・・・というか、変わった弾き方とされていた。むろん、身体的な特徴からくる独特の弾き方というものはあろうが、でもそれはホロヴィッツだけに当てはまるものではない。聴かせるピアニストは全員、その人の弾き方を持っているような気がする。指、手、身体、耳、個人差があるから弾き方もその部分での特徴は出てきて当然かなとも思う。

日本のピアノ奏法概念においては、かつては「ホロヴィッツの奏法って異端」という考え方があったと思うのだが、実は蓋を開けてみれば「自分たちが世界から見たら異端だった?」みたいな哀しい歴史があるような気がする。あえて気づかないふりをしている人もいるようだが・・・

今の時代、まさか重いタッチのピアノで日頃訓練していれば指が鍛えられるなどと思っている人はいないと思うが、でも皆無でもないのでは?

電子ピアノ・・・ある程度以上の進歩は無理・・・

電子ピアノは楽器ではない、あれは家電にすぎない・・・

音を鳴らす仕組みが、そもそもグランドピアノとは異なるので、究極的にはそうなるだろうと思うが、電子ピアノだと無理・・・と盲目的に思っている人は実際にお店に行って最高機種クラスを弾いてみて欲しいと思う。個人的にはローランドのものを弾いてみると電子ピアノへの概念が覆されるのではないかと思う。

「電子ピアノで練習している生徒はタッチがしっかりしない・・・」

この場合、楽器が卓上のもの(キーボードと言うの?)だとやはり厳しい。さらに88鍵あっても、タッチ感が玩具的な機種もあるので、その場合は「タッチがどうもねぇ・・・」ということになろうが、その場合も最高機種クラスを弾けば概念は変わってくるのではないだろうか?

電子ピアノでも最高機種クラスのものとなると、「中古、あるいは新品のグランドが買えてしまう?」みたいな機種もあるので、グランドピアノで弾ける環境にある人は、「その価格であればグランドピアノを購入します」ということになるのかもしれない。現在のところ、その判断は当たり前であり正しいのだろうと思う。

現在のところ?

これからの時代はピアノの弾き方の概念が変わってくる時代の到来になると個人的には思うし願うところだ。完全に聴き手感覚、愛好家感覚で述べさせてもらうと、日本で教育を受けたピアニストや超優秀音大卒業生の演奏は、どこか「楷書的」だと感じる。音そのもの、つまり基音は鳴っているのだが、コントロールが大雑把なので、音の陰影が少ない、あるいは皆無のように聴いていて感じる。これは演奏者の感性の問題とか西洋音楽の歴史がどうたら・・・とか、そのような問題にされがちだけれど、最大の要因は「教育」にあるように僕は思う。おそらく導入から中級レベル、そして上級レベル(そのようなカテゴライズが可能ならばだが)すべての段階において「鍵盤の底までしっかり弾きましょう」とされすぎているのではないか・・・

鍵盤の底まで弾く前にコントロールポイントとなるべき部位がある。底まで・・・ではなく、ここの部分を狙う弾き方がこれからの主流になっていくのではないか?ハンマーが弦を打ち、音の鳴る瞬間の絶妙ポイントは、実は鍵盤の底まで弾く以前に存在している。底まで・・・ではなく、そのポイントを狙う奏法。

聴衆はその大切さに気づいているのでは?むろん、我々愛好家、素人は奏法という概念では演奏を聴きはしないので、「ツマラナイな」「なんだか単調だな。よく弾けているけれど・・・」のように感じるだけだが、でも多くの愛好家、聴衆は気づいている。感覚的に問題点に気づいている。でも多くの教育者は愛好家よりも、この部分は遅れているのではないだろうか?

世の中には様々なピアノのメーカーが存在しているけれど、多くのピアノの中で、極端にコントロールポイントの浅いメーカーがある。スタインウェイだ。スタインウェイのピアノは軽い・・・と僕などでも感じるけれど、正確には軽いのではなくポイント(というか表現のツボ可能の部分)が非常に「近い」と感じる。これはスタインウェイというピアノが職人だけではなく、往年の巨匠、パデレフスキーやホフマン、ホロヴィッツなどというピアニストの要望を受け入れつつ進化していったということと無縁ではないと思う。おそらく彼らのタッチは非常に近いところでコントロールをして表現していた。無駄なことはしないというか。なのでスタインウェイだけ他のピアノに比べコントロールポイントが浅いのだと思う。

彼らの奏法は、鍵盤の底までしっかり弾く・・・というよりは、鍵盤の浅めのところのタッチを狙うという奏法が中心のような気がする。これからの時代は、日本の教育現場でも、このあたりを無視(というか気づかないふりを)していくのは限界のような気がする。聴き手はなんとなく気づいているからね。

本当は、電子ピアノだと無理とか、そのようなことではなく、国産のピアノでいかにコントロールポイントを見つけ、絶妙なポイントを狙うことの重要性を語るべきなのだ。

このような時代がくるかもしれない。

「えっ、重めのタッチのグランドピアノで練習しているの?あなた、それじゃピアノは無理よ。最高機種の電子ピアノで練習しなさい」

kaz



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category: ピアノ雑感

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コメント

 

非常に軽やかで粒のそろった美しい音。
それは確かにピアノ奏法の中で難しいテクニックの一つになると思います。

しかしそのタッチを習得するために必要なのは軽いタッチのピアノ、浅い鍵盤のピアノで、というのはちょっと違います。

そして電子ピアノが軽いからそういうタッチが身に付くかというとそれは勘違いだと思います。
そもそも電子ピアノが鍵盤が軽いのか?
電子ピアノのメーカーももちろん鍵盤の重さくらいはピアノに合わせてあります。
「電子ピアノの鍵盤は軽い」と勘違いする原因は感覚の問題で、「電子ピアノは軽く弾いてもフニャフニャに弾いてもしっかりした音が鳴る」ので軽く感じるというところが大きいです。もちろん音量を大きく設定すればするほど軽く感じます。

そして例えば生のピアノでも、物理的に同じ重さの鍵盤でも、音が良くなるピアノと音がこもって響かないピアノだと鍵盤の重さが違って感じます。これは感覚の問題です。

軽くて美しい音を出そうと思って難しいのはなぜかと言うと、軽く弾こうとすると音がかすれたり鳴りそこなったりしやすいということです。
ここをクリアするのにはやはり「コツ」の習得が必要になります。
それには残念ながら電子ピアノでは難しいのです。
だってかすれたり鳴りそこなったり決してしないんですから。

電子ピアノを使っていては習得できないということではありません。
時々でも生のピアノのスタジオで練習するとか、レッスンに通って教室のピアノを弾くとか、そうしながら研究、習得していけるのではないかと思います。
本人の意識と良い指導によって。

また、確かにスタインウェイは軽い方ですが、Y社が一般的に重い方か?というとそうではありません。
軽いのだけが正義かというと、そういうわけでもありません。
私の考える「いいピアノ」というのは、元の響きがいいことと、タッチの違いが音によく出ること、コントロールしやすいこと、などです。

kazさんのおっしゃりたいことは分かるのですが、ちょっとトンチンカンな情報が入っていると思ったので書き込みさせていただきました。

めだか #MI8SSK7k | URL | 2015/02/04 15:00 | edit

めだかさま

現在、自宅ではローランドの電子ピアノで練習しています。率直に言って、鍵盤は重めだと感じています。また、かすれたりとか音が鳴らないということも、電子ピアノですがあります。大昔に弾いていた電子ピアノ、こちらはコルグの製品でしたが、こちらも鍵盤は軽くはなかったです。スタインウェイに限らず、多くの僕が経験したグランドピアノよりも重かったと記憶しています。ただ、コルグの時は、今持っているローランド製と異なり、音が鳴らないとか、そのようなことはなかったと思います。電子ピアノも機種によるのではないでしょうか?

また記事で述べていたのは、鍵盤の軽さということではなく、音をコントロールできる範囲のことで、底まで弾くと弾きすぎということです。このあたりの感覚は、たしかに電子ピアノだと掴みにくいです。そもそも弦を打つという感覚そのものがないというか、ここは難しいところです。ここは想像力で補うしかないのではないかと思います。

これまた大昔のことですが、ニューヨーク製のスタインウェイを所有していたことがあります。スタインウェイの感覚的なことは、この時の経験もありますし、現在でも海外(主に北米)でスタインウェイのピアノを触ることもありますが(友人宅とかレッスンとか)やはり軽いというよりは、コントロールできるポイントが非常に浅いと感じます。スタインウェイを所有していた時には、調律もスタインウェイ関係者というか、特定の人が行っていましたが、スタインウェイのコントロール開始ポイントは、他のメーカーが数ミリ(忘れましたが6ミリとかそのような数値だったと)に対し、スタインウェイは2ミリという設定というか設計になっていると、その人から伺いましたし、海外でレッスンを受けているピアニストも同じことを言っていたので、あながちトンチンカンな情報でもないのだと思っています。

鍵盤の重さの話ではなく、コントロールできる(反応し始める)ポイントの話です。軽くても反応のポイントが遅かったり、でも幅があって弾きやすかったり、重く感じても反応のポイントは浅かったり・・・ピアノによっていろいろだと思います。

kaz #- | URL | 2015/02/04 16:50 | edit

補足

補足です。

ピアノを弾いた時に軽いと感じたり、重く感じたり、これは感覚的なものが大きいと感じます。コントロール開始ポイントが浅いピアノだと、すぐに反応してしまうので、僕のようなものが弾くと、突然大きな予期せぬ音が鳴ってしまったり、また注意して弾こうとすると、音が鳴らなかったりします。コントロール開始ポイントが浅いと、やはり鍵盤も軽く感じることが多いのではないかと思いますが、コントロールできる幅、範囲もピアノによって差があると思います。一般的に弾きやすいと言われるピアノは、この幅が広めです。逆にあまりにコントロールポイントの幅が小さく、そして繊細だと、奏者の力量を反映させすぎてしまうということもあります。一般的には弾きにくいというピアノになるのかもしれませんが、こうも言えるのではないでしょうか、真に偉大なピアニストは、この幅が小さく、そして浅いところから開始できるピアノを求めるのではないかと。僕のような凡人だと弾きこなせないですが。誰でもが弾きやすいと感じる、コントロールポイントの広めのピアノは、逆に繊細さを求める本物のピアニストには物足りないのではないかと。





kaz #- | URL | 2015/02/04 17:10 | edit

素晴らしく正確なご意見と思います。鍵盤の深さは約10ミリ、その範囲のどこを使って音を出すかがピアニストに与えられた使命。最高速を10ミリの中でどこにもってくるかということです。底を意識して弾くと音の変化が期待できませんし、ガタンというメカニカルノイズばかりが響き、これは音楽には邪魔者です。

Z250FT #- | URL | 2016/07/10 23:01 | edit

Z250FTさま

コメント有難うございます。底までにしろ、途中までにしろ、均一感しか感じられないタッチの連続は平坦に感じられます。平面的というのでしょうか?

そもそも、声楽における発声練習、管楽器におけるロングトーンの練習のような基礎練習がピアノでは一般的ではないのが不思議です。

kaz #- | URL | 2016/07/11 06:50 | edit

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