ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

塀の中と塀の外のタンゴ 

 

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疲れて帰ってくる。でもピアノの練習をする。何故だろう?誰に強制されるわけでもない。誰かが命令するわけでもない。でも弾く。

むろん、疲れて寝てしまうこともある。誰が叱責するわけでもない。でも自分で自分を叱責する。「今日も弾かないのか?どうするんだ?」と。

何故そこまでしてピアノを弾く?それは好きだからだ。ピアノが好きだからだ。でも、その「好き」は、たとえば高級旅館に滞在するのが好きとか、お買い物が好きとか、おいしいレストランで食べるのが好きとか・・・そのような「好き」とは少し違う。楽しいかと問われれば、それは微妙。辛さもあるから。でも好き・・・好きなんだ。

この感覚は、仕事を持ちながらピアノを続けている人は理解できるのではないかと思う。

そのような人は、この映画も共感できるだろう。「タンゴ・リブレ」という映画。

この映画の主人公は冴えない中年男だ。とても真面目な男だ。不器用なまでに真面目。誰も見ていないのに、車は停止線を越えずに停車させる。そして金魚を飼っている。独身なのだろうか?でも独身にしては大きすぎる家、飾られた家族の写真、この男には、かつては家族というものがあったのかもしれない。でも出ていってしまったのだろう。

この男はタンゴが好きなのだ。タンゴ教室に通っている。疲れて帰ってきても、自宅でステップを踏んだりしている。この男の仕事は刑務所の看守。退屈な仕事だ。疲れてしまう。仕事にも、人生にも。でもこの男はタンゴが好きなんだ。

タンゴ教室で、この男はアリスという女性と出逢う。15歳の難しい年齢の息子がいるという。アリスも生活に疲れている。でも15歳の子どもがいるとは思えないほどアリスは魅力的だ。久々の淡い恋心・・・

ある日、仕事場である刑務所でアリスに会う。服役中の夫の面会に来たのだ。アリスには愛人もいた。その愛人も同じ刑務所に服役している。アリスは奔放な女性なのだ。ますます男はアリスに惹かれていく。

「タンゴを習い始めたの・・・」
「なぜタンゴなんか・・・」
「そんなの私の勝手でしょ。踊りたいの」

嫉妬する夫。妻は塀の外でタンゴを踊っている。情熱の踊りを・・・

夫は服役中の囚人の中にアルゼンチン人がいるのを知る。

「お前・・・アルゼンチン人か?」
「そうだが?」
「タンゴは踊れるか?」
「俺はアルゼンチン人だぜ?」
「お願いだ。俺にタンゴを教えてくれ。タンゴを踊れるようになりたいんだ」

このアルゼンチン人の囚人役にはチチョ・フルンボリというタンゴの名手が扮している。実に見事な踊りをスクリーンの中で見せてくれる。

男だけの、塀の中でのタンゴ教室。囚人だけのタンゴ教室。

「タンゴは魂の踊りなんだ!」

面白半分に見ていただけの囚人たちも、次第にタンゴの魅力に目覚めていく。

踊りの輪が広がっていき、群舞になっていく。

塀の外の生活も大変だ。でもタンゴを踊る。好きだから・・・
塀の中の生活はさらに過酷だ。でも囚人たちはタンゴを踊るのだ。好きだから・・・

どんなことが起こっても、タンゴを踊る。タンゴが好きだから・・・

囚人たちが、一人、二人とタンゴ教室に加わっていく。そして全員がタンゴを踊る・・・

この心理はピアノを弾く人なら理解できるはずだ。

好きだから・・・

kaz



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