ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

モスクワの夜は更けて 

 

本当は歌声喫茶のことを書く予定ではなかった。「モスクワの夜は更けて」という曲から、つい歌声喫茶を連想してしまった。本当は編曲能力ということについて書きたかったのだ。編曲、あるいは即興演奏の能力について。

もし、音大の入試で次のような課題があったらどうなるだろう?多くの受験生、そして指導する教師も当惑するのではないだろうか?

課題:「モスクワの夜は更けて」というロシアの曲があります。この曲をピアノ独奏用に編曲して演奏しなさい。条件として、ピアノのリサイタルでのアンコール演奏というイメージで編曲すること。

今も、昔も、そして趣味だろうが専門だろうが、クラシックのピアノを習っている人は、「書かれている楽譜の再現しかできない」という弱点があると思う。何も、大作を作曲したりとか、ジャズの名プレイヤーのアドリブのように延々と弾けと言っているわけではない。そのようなことではなく、あまりにも「楽譜再現」という能力に偏ってはいないだろうかと・・・

ショパンやモーツァルトの時代にまで戻らなくても、100年程前までのピアノ黄金時代のピアニストは、自分で作曲したり、アンコール用に自分で編曲したりすることが当たり前だった。この能力、なんとなく既存の曲を演奏する際にも強力な武器となるような気がする。

一生懸命、長時間さらい込んだ曲なら弾ける、というか、さらい込んだ曲しか弾けないというのは、割と普通にある現象なのではないかと思う。クラシックのピアノ学習者にとって、楽譜のない状態で、いきなり「何か弾いてくれない?」と要求されるのは、とても大変なことなのだと思う。これって、当たり前のようだけれど、もしかしたら当たり前ではないのかもしれない。

大昔のことだけれど、ある楽器製造会社経営の音楽教室に関係していたことがある。むろん、講師として働いていたわけではないが、この音楽教室の理念というか、目標設定は素晴らしいものだったと記憶している。ただ楽譜に書いてあることを並べるというだけではない、総合的音楽能力の育成を目的としていたように思う。モチーフから即興できたりとか、自由に和声がつけられたりとか。そして自作の作品を演奏できたりとか・・・

目標、目的は素晴らしいものだったけれど、でも実態というか、街の教室レベルでは「楽譜が読めません」「どうやって練習していいのかわかりません」という生徒、そして「練習させようにも簡単な楽譜すら読めないんですから」「耳だけで弾いちゃうのよね。なまじサウンドとして豊かなものを浴びてしまっているので、楽譜から音にするというシンプルなことに満足できない感じで・・・」という悩む教師たちの姿があった。才能ある選ばれたエリートならそうではなかったのかもしれないけれど、巷には「楽譜の読めないピアノの弾けない子」が沢山いたように思う。それはとても不幸な姿だったように記憶している。理念は良かった。でも何かがいけなかった・・・

でも考えてみればおかしな話ではある。総合的な音楽能力の育成を、実態が伴っているかは別としても、民間の楽器製造会社の音楽教室や、個人の街のピアノ教室の先生の中で、その方面に熱意のある人の教室だけがそのような方向性になっているということがどこかおかしい、というか逆のような気がする。本来は専門機関、専門家育成を目的とする音大、その音大の入試で、そのような能力を求めていくようにすれば、ピアノ教室も変わってくるのではないだろうか?今は言葉は変だが、下が一生懸命で上は超保守的という感じがする。本来は逆なのではないだろうか?上が引っ張っていく図式が理想というか・・・

音大の入試で、即興演奏や自作の作品、編曲作品の演奏をも課題にしたら何かが変わってくるかもしれない。あまりにも過去の偉大な作品を弾ければ・・・という面が強すぎなのでは?楽譜を、音符を音にするという側面だけに偏りすぎているというか。

音楽院、コンサーヴァトリー・・・つまりコンサヴァティヴ。音大とか音楽院というところは、もともとが保守的なものなのかもしれない。

昔はピアニストも作曲したり、編曲したりしていた。今だってそのようなピアニストはいる。いるけれど「編曲もするピアニスト」というカテゴライズはされる。まだまだ過去の作品だけを演奏するピアニストが主流で、それが普通なことなのだ。

スティーヴン・ハフというピアニストは作曲もするし、編曲もする。この能力は彼がショパンやリストを演奏する時にも役立っているように感じる。ハフの弾くショパンやリストは「ハフのショパンやリスト」のように聴いていて感じるから。ただ楽譜を音にしています・・・という演奏ではないように思うから・・・

スティーヴン・ハフの「モスクワの夜は更けて」



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