ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

音色 

 

留学していた頃は音楽院の学生の演奏をよく聴いた。アメリカの音楽院の試験は基本的に一般公開される。この種の演奏会(実は実技試験なのだが)は無料だし、毎日のように行われていたので、気分転換に聴いたりしていたのだ。

いくつかの音楽院の学生の演奏を聴いたけれど、アメリカの名門音楽院というところは、非常に留学生が多い(というか、ほぼ留学生か?)ので、学生の演奏を聴くことは、自然と国、出身地による演奏の違いというものを感じることのできる機会ともなった。

個人的な印象では、ロシア、そして韓国からの留学生の演奏がずば抜けていたという印象だ。

日本からの留学生の演奏もよく聴いたと思う。彼ら(というか彼女たちというか・・・)は日本の有名音大を既に卒業してから留学していた。桐朋の卒業生が多かったと思うが、中には日本音楽コンクールで2位になったとか、3位になったとかという超優秀な人もいた。

彼女たちの演奏は実に優秀だったと思う。本当に安定した演奏だし、まず大きなミスをしない。この安定性というものは、とても大きな長所なのではないかと思った。「丹念にさらってある、弾きこんである」という印象を与えるということは、悪いことではない。

でも・・・

どこか曲と距離感があるというか、本当に演奏者の内面から出てくるような、そのようなものを感じる演奏は少なかった。というか、出会えなかった。実によく弾いているのだ。しかし・・・

楽観的、かつ好意的に聴けば、その演奏は「ああ、このような曲なのね」ということが分かりやすい演奏ともいえるが、なんというか惹きこまれる要素、聴き手が思わず注目してしまう魅力が皆無というか・・・

基本的に音色の種類が少ない(無い?)のだ。なので、どの部分を聴いても同じ印象だし、作品が違っても「曲が変わった」ということは感じるけれど、作曲者や時代の違いなどを感じることが非常に困難な感じなのだ。また、Aさん、Bさんという異なる人物が演奏していても、どこか似た印象、というか同じような印象を持ってしまう。

音色が単調な学生は外国人にもいた。でもそのような人たちの演奏は、メカニカルな問題も抱えていて、大崩壊したりとかしていた。でも日本人学生の場合はメカニカルには達者に弾けているので、余計に音色の単調さが目立つのだ。バランスが悪い印象なのだ。

何故、日本人の演奏は、どこか特殊なのだろう?ここまで共通した特色(あまりに達者に弾けるので、弱点とも言えない感じではある)があるということは留学前の教育、つまり日本での教育に何か要因があるということなのかもしれないと、日本人留学生の演奏を聴きながら思ったものだ。

「難曲を、実に簡単そうにミスなくパラパラと機械のように弾く」

このような、ある意味、日本人の演奏の特色、あるいは欠点、これは昔から言われていたと思う。そして、決まってそれは「文化の違い」「人種の違い」「宗教を持っていない」などの理由によるものだった。

「日本人は西洋人のように自分を出すという文化、習慣を持っていなかった・・・」などという理由だ。まぁ、日本人は奥ゆかしいから・・・

「でも、本当は他に理由があるのでは?」とも感じていた。韓国人の留学生の演奏は同じ東洋人なのに、実に表現意欲に富んでいる印象なのだ。韓国人はクリスチャンが多いから西洋文化に馴染んていて、それがピアノ演奏に反映されているのか?でもそれも無理のある解釈なのでは?

「もっと根本的な理由があるのではないか?」

そのような時に、イゴール・ロヴチンスキ―という学生の演奏(正確には試験だが)を聴いた。その時に感じたのだ。「文化とか、そのようなことではなく、日本人留学生の演奏における音色の無さは弾き方によるものなのではないか」と・・・

ロヴチンスキ―という学生の経歴を知っていたわけではない。学生の演奏会(くどいようだが試験)なので、名前と曲目、そしてバチェラーなのかマスターなのか、あるいはドクターなのかディプロマなのかということぐらいしか紙には書いていない。プログラムなどというものもなかった。

「イゴール・ロヴチンスキ―?ロシアからの留学生かしら?」ぐらいの感覚で聴いた。

彼と同じようにメカニカルには弾ける、いや彼以上に達者な日本人留学生もいたと思うけれど、根本的に「音色の多彩さ」というものが違っていた。彼の演奏を聴き、そして鍵盤上の指の動きを見るうち、なんとなく思ったのだ。

「もしかして・・・弾き方?」

日本人留学生の演奏に共通していた弱点、つまり音色が単色ということは、文化とかそのようなことではなく、基本的な弾き方なのでは?そうでなければ、あそこまでどの人も同じように弾き、同じような音を並べているわけがない・・・

でもそんなことがあるのだろうか?彼女たちは日本の有名難関音大を優秀な成績で卒業してきているはずなのだ。有名音大では基本的な弾き方を教えていないのだろうか?まさか・・・

おそらく、日本で彼女たち、つまり有名音大の学生の演奏だけを聴いていたら気がつかなかったと思う。同じ学生、それも様々な国の学生の演奏を結果的には比較するように聴くことになったので、「弾き方」「奏法」というものに起因していると感じたのだと思う。会場もピアノも同じだったから。比較しやすい環境で僕が聴いていたのだと思う。

ロヴチンスキ―、現在はピアニストとして(まあまあ?)活躍しているらしいけれど、僕が聴いた時には、まだ学生で初々しさがあった。というより、ピアニストとしての「個性」を感じさせるというよりも、ピアノを弾くということの根本的なものが分かりやすい演奏をしていたのではなかったかと思う。なので、僕が「弾き方なのでは?」と感じた・・・

kaz



にほんブログ村 クラシックブログ ピアノへ
にほんブログ村


ピアノ ブログランキングへ
スポンサーサイト

category: ピアノ雑感

tb: --   cm: 0

△top

コメント

 

△top

コメントの投稿

 

Secret

△top