ピアノのある生活、ピアノと歩む人生

「ピアチェーレ」代表の私的ブログ

さあ、ショパンを弾こう! 1 

 

これは想像だが、もしショパンが現代のショパン・コンクールに参加したらどうなるだろう?一次予選を通過するだろうか?意外と落ちてしまうかもしれない。現代のピアノに慣れていないだろうしね。他のコンテスタントに比べたら音も小さいのかもしれない。「なかなか聴かせるユニークな演奏ね。でも音に迫力がないわね。もっとカ~ンと鳴らさないと!」

運よく先のステージに進めたとしても、解釈とかスタイルという点でショパンの演奏は問題となってくるかもしれない。ショパンは即興も得意だったらしいから、審査員が聴いたこともないようなヴァリアント満載だったりして、それはコンクールという場に相応しくないと判断される。審査員がショパンに向かって「あなた、エディションは何を使っているの?作曲者の意図を追及する気はないの?」「あの・・・僕が作曲者なんですけど・・・」みたいな?

いわゆる細かな装飾、ショパンの作品にはこれが沢山ある。譜読みが面倒なんだよね。細かくて読みにくいし。ショパンの最初の難関は細かな装飾部分、右手と左手が合わないこと。数を数えて「この右手のこの音、えっと左手の伴奏のこの間に入れるのだな」みたいに線を引っ張ったりして。どうしても僕のような昭和のピアノ世代は、楽譜をそのまま、忠実に弾かなくては、つまり印刷されたとおりに弾かなくてはと思うので、だから大変なのだ。次の難関、ヴァリアントって数種類あるらしい。ショパンは弟子によってヴァリアントを書き換えたりしていたらしい。これが複数の楽譜の存在となり、ショパンの楽譜研究の難しさともなっているらしい。なるほど。でも僕は研究家でもないし、真面目でもないので、ヴァリアントがあるのならば、楽譜に記載しておいてくれればいい。

でも、書いてある楽譜、少ない。ヘンレ原典、パデレフスキには基本的にはヴァリアント記載はないのでは?エキエルにはある。でも全部ではないよね?だったら、ヴァリアントなんて入れなくてもいいのかもしれないが。

ヴァリアント、そもそも楽譜に書いてあるものを、そのまま弾くという発想とは異なるものなのでは?ショパンの時代には、即興の素養も演奏者に課されていたのだろうか?そうかもしれない。でも「さあ、好きにヴァリアントつけて弾いてみて」と言われて「では・・・」と弾ける人、今の日本で、アマチュアだけではなく音大生にだってどれだけ存在するのだろう?コンクールや試験でヴァリアントなんてつけて弾いていいのだろうか?いいのか・・・というより、受かるのか?落ちるような気がするが・・・

今の時代でも普通にヴァリアントというものがある世界がある。声楽の世界。特にベルカント・オペラの場合、ヴァリアントは必要になってくるはずだ。簡単に言ってしまえば、歌手によってアリアのパッセージの音型などが異なってくるのだ。

声楽の楽譜、リコルディの楽譜だったと思うが、リッチのカデンツァ集という楽譜がある。様々なカデンツァ、ヴァリアントが楽譜化されている。数パターンあったり、中には「これは歌手○○さんのヴァリアントです」なんて譜例もある。基本的にベルカント・オペラのアリアの場合、再び同じ旋律が登場したら、前と同じには歌わないという鉄則があるみたいだ。マリア・カラスもジュリアード音楽院のマスタークラスでそう言っていたと記憶している。

「その旋律は前に出てきましたね。聴衆は一度聴いているわけです。二度目は変えましょう。これはベルカント・オペラの伝統でもあります」

つまり、二度目はヴァリアントをつけて歌いなさい、飾りなさい・・・ということになる。声楽科の学生はピアノ科の学生よりも即興能力に長けているのだろうか?そうではないからリッチの楽譜などが出版されているのかな?でもいくら変えたとしても、その音型を楽譜に自分で鉛筆で記譜してしまったら、それは厳密にはヴァリアントとは言えないような気もしてくるが、どうなのだろう?先生に言われたからそのように変えていますというのは、ヴァリアント精神に反するのでは?

ベッリーニの清教徒というオペラ、その中の「私は美しい乙女」というアリア。僕が所有しているアリア集、最初の旋律が二度目に出てきても楽譜は最初と同じだ。ヴァリアントは記載されていない。この演奏はサザーランドのもの。彼女は二度目の旋律、もちろん飾っている。サザーランド独自のヴァリアント、それを集めた楽譜は存在しているらしい。歌手独自のヴァリアント集なんて持っていたら楽しいだろうな。

これを聴きながら思う。ショパンの装飾音、つまり「埋め草パッセージ」を弾く時、あるいは旋律にヴァリアントをつける場合、「左手のこの音とこの音の間に右手のこの音をいれて・・・」みたいに線を引っ張るような弾き方ではなく、あたかも歌手のヴァリアントのように弾いてみるのがいいのかもしれない。つまり「合わせなきゃっ!」というよりは、サザーランドのようにパーッと軽やかに・・・みたいな?

kaz




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コメント

 

すごく興味深いお話ですね

すごく興味深いお話ですね。
ショパンはきっと、弟子の感性や得手不得手に合わせて楽譜を書き分けていたんですね。
声楽の世界、よく知りませんが、素敵。
私も同じ旋律が二度出てくると、2回目は多く間を取るテンポルパートで弾いています。
同じじゃ、つまんないし。
でも、左右が合わないと、線を引いてます。ははは〜、情けない😅

どーも #- | URL | 2017/02/01 07:15 | edit

どーもさま

線は弾いてもいいとは思いますね。でも聴いている人にそう気づかせない弾き方がいいのかな・・・と。

最近、演奏とはクリエイティヴな行為でもあるのかなと感じ始めています。

kaz #- | URL | 2017/02/01 20:56 | edit

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